1997 Fiscal Year Annual Research Report
メタファーの新しい理論的分析の試みと20世紀ドイツ文学-認知心理学、現代システム理論の見地から-
Project/Area Number |
09610508
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉田 徹也 北海道大学, 言語文化部, 教授 (80003531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 龍一 北海道大学, 言語文化部, 助教授 (10241390)
鈴木 純一 北海道大学, 言語文化部, 助教授 (30216395)
石川 克知 北海道大学, 言語文化部, 助教授 (30142665)
佐藤 拓夫 北海道大学, 言語文化部, 教授 (20091457)
高橋 吉文 北海道大学, 言語文化部, 教授 (20091473)
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Keywords | メタファー / レトリック / 認知 / システム / オートポイエシス / コミュニケーション |
Research Abstract |
今年度は研究計画に従い、メタファーという現象の生成メカニズムを現代的かつ包括的な理論的枠組によって捉え直してみる作業を中心に研究が進められた。まず、1)現代システム理論の観点からいえば、メタファーの生成メカニズムがオートポイエシス・システムにおける自己制作プロセスと多くの点で類似性があることが確認された。すなわち、従来レトリックの分野で「自己比喩」あるいは「意味の創出的作用」と呼ばれてきたものが、オートポイエシスにおけるシステム要素の自己産出ネットワークの構造からかなりの程度説明可能である、という知見である。また、これと関連して、フッサールの現象学やデリダのテクスト論等も、異なる術語を用いてはいても、同様の問題意識を共有していることも明らかにされた。一方、2)認知科学的視点からの研究においては、人工知能やコンピュータにおけるメタファー現象の処理過程の基礎的な検討により、インターフェイスあるいはコミュニケーションとしてのメタファー機能という可能性が浮上してきている。これは従来のメタファー=転義という概念装置に根本的な変更を迫る知見ともなりえるもので、次年度、より詳細な検証が予定されている。また、上記の新しい理論的研究に加えて、従来のメタファー研究の系譜(ヴァインリヒ、ビアズリ-、リク-ル、レヴィン、佐藤信夫、等)にも再検討が加えられ、新たな理論的な枠組での読み換え作業が進行中であり、その成果は次年度以降にまとめられる予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 石川 克知: "虚構のオブジェクト-サイバーリアリズムの基盤" 北海道大学言語文化部紀要. 33号. 89-116 (1998)
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[Publications] 堀田 真紀子: "比喩とモラル-ロベルト・アンチン・ムシツレの『特性のない男』" 北海道大学言語文化部紀要. 33号. 167-193 (1998)
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[Publications] 鈴木純一: "「自己」観察するシステムとしてのテクスト" 北海道大学言語文化部研究報告叢書. 21号. 19-35 (1998)