1998 Fiscal Year Annual Research Report
メタファーの新しい理論的分析の試みと20世紀ドイツ文学-認知心理学・現代システム理論の見地から
Project/Area Number |
09610508
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉田 徹也 北海道大学, 言語文化部, 教授 (80003531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 龍一 北海道大学, 言語文化部, 助教授 (10241390)
鈴木 純一 北海道大学, 言語文化部, 助教授 (30216395)
石川 克知 北海道大学, 言語文化部, 助教授 (30142665)
佐藤 拓夫 北海道大学, 言語文化部, 教授 (20091457)
高橋 吉文 北海道大学, 言語文化部, 教授 (20091473)
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Keywords | メタファー / レトリック / システム / メトンミー / テクスト論 |
Research Abstract |
今年度は研究計画に従い、昨年度に行われたメタファーという現象の生成メカニズムを現代的かつ包括的な理論的枠組によって捉え直してみるという作業の成果をもとにして、具体的なテクストについての研究が進められた。扱われたテクストは今世紀初頭から現代の文学テクスト・批評テクストを中心にしながらきわめて多岐に渡ったが、その成果の主なものをここにまとめておく。1)ブルーストにおける隠揃喩と換喩:この今世紀を代表する′物語作者の創作の中核には、記憶をテクストとして定着させるためのシステムとしての比喩的な言語連鎖(要素の自己産出)という方法論が見られるが、その比喩の形式は、隠喩という通時的な系列と換喩という共時的な系列とが巧妙に組み合わされたものであることが明らかになった。2)ベンヤミンにおけるアレゴリーとシンボル:一方、現代の批評テクストの先駆けとなったベンヤミンのエッセイ群には、独自の歴史哲学に基づいたアレゴリーとシンボルの交差が見られるが、それらが方法論としてはメタファーとメトニミーの交差という言語的なシステムとパラレルな関係にあることが認められた.3)また、そのほかにも、ランスマイヤー、村上春樹等の同時代の作家の物語、あるいはキーファ一等の芸術家の作品、さらには先端コンピュータ技術におけるオブジェクト指向という現象などにも、システム論を中心とする新しいメタファ一論との相関関係が認められるのではないかという知見を得ることができた.これらのテーマは本研究課題の最終年度である来年度において、論文としてまとめられ、公刊される予定である。
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Research Products
(2 results)