1998 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀ドイツ文化のイメージ研究-ベンヤミン研究の文化史的展開
Project/Area Number |
09610509
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
荻原 晶子 (三宅 晶子) 千葉大学, 文学部, 助教授 (50157608)
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Keywords | アール・デコ / アール・ヌーヴォー / ラファエル前派 / ミュシャ / 慰安婦 / ベンヤミン / 戦争 |
Research Abstract |
論文「アール・デコへと至るモダンの径路」(「武蔵野美術」特集「モダニズムのかたち」1999年1月)を執筆した。本論文ではアール・ヌーヴォーからアール・デコへと至る物の「かたち」に「フェティッシュ」化の流れを見い出したが、他方、それと並行して進行しつつあった女性の「フェティッシュ」化の流れを、ラファエル前派の女性像(抑圧と陶酔の美化)、ミュシャのポスターの女性像(物神としての商品の戴冠式を執り行う女神)、アール・デコの女の顔(「無機的なもののセックスアピールに参ってしまうフェティシズム」-ベンヤミン-の表徴)を中心に分析した。アール・デコの抽象化・無機物化されたかたちは、まさに「記号」である。そしてその記号の能記は「流行」であり、所記は「消費世界は美しい」という不在のユートピアである。ここで行ったモダニズム分析は、今後、「公共性の転換」」という観点から、ファシズム、コミュニズム、後期資本主義が突入した総力戦体制の分析を行っていく上で重要な基礎となる部分である。 前年度に引き続き、戦争をテーマにした資料(図書、ヴィデオ、CD-ROM、CD等)を収集した。戦争と人権、ジェンダーの問題について研究を深めるため「戦争・女性・人権」学会に入会し、ディスカッションや情報交換を行った。戦争・国家・女性の問題が集約的に現われている「慰安婦」問題については、生活クラブ連合会「本の花束」編集部主催による学習会で口頭発表し,その後、元「慰安婦」ハルモニたちの共同生活の記録「ナヌムの家のハルモニたち」の書評を行った。また、この問題を含めて生と政治、表現の問題を深く考察した「つぶやきの政治思想」 (1988、青土社)の著者李静和氏にインタビューを行った。ベンヤミンの著作のデータベース化を続行し、理論的整備を進めた。
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Research Products
(2 results)