1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610518
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
三浦 淳 新潟大学, 人文学部, 教授 (70134905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 公子 富山国際大学, 人文学部, 教授 (20239487)
恒川 隆男 明治大学, 文学部, 教授 (60022258)
森川 俊夫 東京国際大学, 経済学部, 教授 (10017569)
杉村 涼子 京都産業大学, 外国語教育研究センター, 講師 (80247775)
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Keywords | 家族 / 物語 / 芸術 |
Research Abstract |
「マン家の家族史と物語芸術」の研究の結果,我々が到達した知見は,マン家の人々の活動に関わる多様性である。とりわけ,日常生活,政治,社会問題,そして芸術思潮が複雑にからみ合って,マン家の人々の創作や行動を規定している様をみるなら,このテーマは今後さらに多方面から追究されなければならないであろう。 個別的に述べれば,1)トーマス・マンの三女エリザベートに対する愛情が,彼の作品や日常の行動に及ぼす影響力の深さは,芸術性が芸術家の基盤をなす家族と無縁ではありえないことを証明している。2)トーマス・マンの長女エーリカのアメリカでの反ナチ活動は,それがアメリカを反ファシズムに導くという目的意識を持っている限り,事実を正確に伝えると言うよりは,一種のプロパガンダに近づかざるを得ないのでありそこに父の芸術性と一線を画する彼女の独自性,もしくは限界があった。3)父トーマスは日記を執拗に書き続けている。彼の政治的状況判断は子供たちの世代に比して正確とは言えなかったが,毎日の出来事を書き期すことによって,彼は政治世界とは別の深い日常性を保持し続けたのではないか。4)トーマスの兄ハインリヒの初期作品に見られる絵画性,同時代の印象派との類似性が明らかにされたが,これにより,当時ヨーロッパの家庭に浸透しつつあった絵画の様式が物語芸術と関連を持つという点で,物語の基盤にある家族や家庭内での芸術享受に新たな光が当てられたと言えよう。
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Research Products
(10 results)
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[Publications] 三浦 淳: "可能性の小説としての奇跡-初期ハインリヒ・マンのために-"マン家の家族史と物語芸術. 1-23 (2000)
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[Publications] 森川俊夫: "トーマス・マンの旅から"マン家の家族史と物語芸術. 60-73 (2000)
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[Publications] 恒川隆男: "お嬢ちゃんの歌と混乱と早熟な悩み"マン家の家族史と物語芸術. 74-89 (2000)
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[Publications] 恒川隆男: "Konfiguratives Denken und Allegorie"global benjamin. 191-202 (1999)
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[Publications] 恒川隆男: "Uber Elisabeth Reicharts Roman; "Das vergessene Lacheln der Amaterasu""The Journal of Humanities, Meiji Univ.. 6. 87-102 (2000)
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[Publications] 村上公子: "アメリカのエーリカ・マン"マン家の家族史と物語芸術. 24-40 (2000)
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[Publications] 村上公子: "Kamikaze-ein MiBverstandnis"Uni Press (Angsburg U.). 203. 65-71 (1999)
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[Publications] 村上公子: "キリスト教国家か世俗国家か-現代ドイツ社会における宗教問題を考える-"富山国際大学紀要. (2000)
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[Publications] 杉村涼子: "イタリア、この不気味なるアルカディア"京都産業大学論集・人文学系列. 27. 1-37 (2000)
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[Publications] 大原徹,村上公子他: "ヒトラーの野望"世界文化社. 194 (2000)