2000 Fiscal Year Annual Research Report
インド文学史を形成する社会的位置の異なる様々な種類の詩人たち
Project/Area Number |
09610528
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
水野 善文 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (80200020)
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Keywords | インド文学史 / 詩人 / サンスクリット |
Research Abstract |
今年度、研究代表者の所属研究機関変更に伴い、収集したデータ保存・処理のためのパソコンおよびその周辺機器一式も更新しなければならなかった。 研究開始初年度より、古典期から近代に至るまでのインド詩人たちのパーソナル・データを収集、蓄積してきたが、今年度も、原典テキストの読解作業を通しておこなうという方針のもと、鋭意努力を続けてきた。だが、最終年度に至っても、当初目論んだほどまで網羅することができなかった。したがって、社会的にどんな地位にあって、どんな貢献をしたかといった項目を含む所謂「インド詩人人名録」の作成は、完璧なものを目指して、後日に期すことにしむた。 個人データを集める一方で、インドの詩人たちの行動様式を探り出すことができそうなサンスクリット原典を調査してきた。今年度の調査から注目すべき点は、王宮において催された「歌会」である。Srikanthacaritaの第25章やSimhasanadvatrimsikaのあるバージョンの一部には、王宮における歌会の記述が見られる。特に前者(おそらく12世紀頃と思われる)によれば、様々な職種の人々が歌会に招かれていたことが分かる。たとえば、医者や教師、哲学者などが含まれるほか、本研究の見地からとりわけ重要な、異種の詩人の存在が示唆されていた。一例を挙げれば、平生は寺院にいて宗教文献の読誦に携わっている詩人が、王宮の歌会にも招かれているのだ。その歌会の場で力量が買われれば、王宮に雇用される、つまり転職の可能性も充分ありうるのである。 詳しくは研究成果報告書に譲るが、インド社会に多種存在し、生涯に活躍の場を転じることもあった詩人たちの実態に関して、歴史的に網羅するところまでは至らなかったが、知見を広めることができた。
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