1997 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚障害児の言語習得に関する実践的研究:北欧におけるバイリンガル教育の成果から
Project/Area Number |
09610534
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
加藤 三保子 豊橋技術科学大学, 工学部, 助教授 (30194856)
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Keywords | 手話 / 聴覚障害児教育 / バイリンガル教育 |
Research Abstract |
本年度の研究目標は、北欧における聴覚障害児のバイリンガル教育の方法論の研究、および、北欧のろう学校で手話学習教材として使用されているテキスト(付属ビデオテープ)とその指導要領の分析であった。前者に関しては交付申請書に記載した2つの文献を中心にして、デンマーク、スウェーデンにおける聴覚障害児のバイリンガル教育の理念と成果について考察した。その結果、以下の点が明らかになった。 1.手話を母語として充分に獲得すれば、聴覚障害児が自らの意志を満足に表現でき、コミュニケーション能力を発達させられる。2.充分な表現能力をもつことは自省と自信につながり、心理的・情緒的に安定した発育を遂げる。3.手話は聴覚障害児にとって、思考と分析の道具であり、知的探求心をうながすためのもっとも重要な要素である。4.手話を母語として充分に獲得すれば、母語集団への帰属意識が確立され、文化的アイデンティティーをもつことができる。 上記2番目の研究課題に関しては、研究材料となるテキストの英語版出版が遅れていることにより、テキストの内容と指導要領の分析作業に支障が出ている。しかし、付属のビデオテープを分析した結果、録画された手話表現が手話の言語特性や音声言語との違いを自然な形で示すように工夫されていることがわかった。このビデオを視ることによって、ろう児は母語で楽しく語られるテキストの内容に興味をもち、語彙の獲得がうながされ、表現能力が豊かになり、音声言語の読み書き能力が向上しているものと予想される。 本年度の研究成果をもとに、次年度は日本手話をろう児の教育言語として使用するための指導法を提案し、日本手話学習用テキストの開発をめざす。
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