1997 Fiscal Year Annual Research Report
借用形式に観察されるモンゴル帝国期の多重言語状況の研究
Project/Area Number |
09610537
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
樋口 康一 愛媛大学, 法文学部, 教授 (20156574)
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Keywords | モンゴル帝国 / 多重言語状況 / 翻訳仏典 |
Research Abstract |
モンゴル帝国期における多重言語状況の様相は、端的には翻訳仏典の行文中に保存されている借用形式が如実に示している。その種の翻訳仏典の一つに、大阪外国語大学石浜文庫所蔵の『仏頂尊勝陀羅尼経』があり、研究代表者は既にその概要を紹介し、その校訂テキストを公刊している。このたびの研究課題の趣旨に沿って、改めてこれに対する分析をすすめ、その結果を昨夏ハンガリー・ブダペスト市で開催された第31回国際アジア・北アフリカ人文学者会議で報告して、各国の研究者の批判を仰いだ。その成果は、Zentral-Asiatisch Studien第28号に掲載される予定である。 さらに、これとは別の、未発表の仏典についても現在本研究課題の趣旨に沿った調査・分析が進行中であり、その成果を今夏フィンランド・ヘルシンキ市で開催予定の第41回常設国際アルタイ学会で発表し、各国の研究者の批判を仰ぎたいと考えている。 なお、平成7・8年度の科学研究費補助金交付によって蓄積された借用形式に関わる知見の一端は、研究成果公開促進経費の公布を得て本年2月に刊行された拙著『蒙古語訳「牛首山授記経」の研究』においても開陳されているが、本研究課題によって得られた知見とこれとを十全に活用し、借用形式の総合的な整理と体系化に着手する予定である。また、近年進展が著しい社会言語学に関する研究成果を十全に活用し、モンゴル帝国期における多重言語状況の実相の解明を試みる所存である。
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