1997 Fiscal Year Annual Research Report
1930年代パリと外国人芸術家-「パリ神話」の変容と都市表象-
Project/Area Number |
09610548
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
今橋 映子 筑波大学, 文芸・言語学系, 講師 (20250996)
|
Keywords | 1930年代 / パリ神話 / 文学と写真 |
Research Abstract |
今年度は、1930年代パリに関わる芸術家たちのうち、従来研究の進んでいなかった作家--特にジョージ・オ-ウェルと金子光晴について、重点的に研究を進め、別記のように単独論文にまとめて公表することができた。オ-ウェルについては、ロンドン、パリの対比の中で、英米社会進化論の影響下にある「貧困観」と、それを追究する「ドキュメンタリー」と言う文学的言説の発生について考察した。また金子光晴については、晩年自伝的三部作に至るまでの光晴の散文の文体について詳細に解析し、〈時代〉の語り方と、そこから析出される30年代パリの神話的姿について再考した。 また日本人画家佐伯祐三についても実地調査、研究を行ない、同様に単独論文にまとめた。とかく真贋論争のみに片寄る研究から一歩距離を置き、佐伯作品を、むしろ同時代パリ写真との類縁から探ったこの論文は、美術史的にも新見地を提出したと言う点で、専門領域で評価されるに至っている。今年度の成果を含め、この数年にわたる研究の一端として、1998年5月刊行予定の単著を現在準備中である。同書『パリ・貧困と街路の詩学--1930年代外国人芸術家たち』(都市出版、総頁約500ページ)では、大不況とファシズムの時代にあって、パリの街を放浪する中から、独自の都市美学を紡ぎ上げた外国人芸術家たちについて、思想家、作家、画家、写真家の別を問わずに論じている。その中から、ヴェルター・ベンヤミンをはじめとする外国人芸術家たちが、新たなる「パリ神話」を表象している事実が浮かび上がってくるであろう。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] 今橋映子: "壁の街・文学の音-佐伯祐三" 『アスティオン』TBSブリタニカ. 第44号. 224-271 (1997)
-
[Publications] 今橋映子: "物語られた〈時代〉-金子光晴『ねむれ巴里』" 『アスティオン』TBSブリタニカ. 第45号. 230-250 (1997)
-
[Publications] 今橋映子: "貧困という制度-G.オ-ウェル『パリ・ロンドンどん底生活』" 『文藝言語研究-文藝編』. 第33巻(3月刊行予定). (1998)
-
[Publications] 今橋映子: "『パリ・貧困と街路の詩学-1930年代外国人芸術家たち』" 都市出版(株)(5月刊行予定), (1998)