1998 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本の翻訳・再話と読者意識-児童文学への変容を中心に-
Project/Area Number |
09610549
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
佐藤 宗子 千葉大学, 教育学部, 助教授 (40162490)
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Keywords | 翻訳 / 再話 / 児童文学 / 翻案 / 改作 / 読者 |
Research Abstract |
1 引続き「明治翻訳文学全集」 <新聞雑誌編>を入手し、児童文学分野への翻訳・再話がなされているものの調査を行った。後に児童文学の中に定着する作品に物語性豊かなものが多いことが概括的にいえる。前年度に注目した大衆的文学と芸術的文学との融合的紹介はやはり散見されるが、こうした物語性のあり方について継続的に検討を進めたい。 2 (1) ウィーダ『フランダースの犬』の移入について、大阪国際児童文学館等で調査を行った。その結果、一人の再話者による複数の再話の存在、就中結末の差異容認が明確に認められるほか、同一出版社による別々の再話者が手掛けた複数再話提供の様子などが見えてきた。同時期の再話群の関係について大人の媒介者たちが「物語」の並立を自然なものとしていたこと、その際、雑誌の種別や付録、単行本など媒体の差異が考慮されているらしいこと、また輸入映画なども再話の参考にされていることなどがわかった。 (2) 1998年10月に日本児童文学学会研究大会で上記検討結果について特に宇野浩二と池田宣政の再話群を中心に研究発表を行い、興味深い再話化の例であるとの反響を得た。 (3) 明治期の翻案から近年のアニメ化まで、多様な再話化がなされ、今日も知名度のある作品だけに、ウィーダの他作品移入の状況や、アニメ作品等も考慮に入れて、具体例としての考察をさらに続けていきたい。 3 森田思軒、千葉省三の再話については検討継続中だが、昭和初期の佐藤紅緑作品にヴェヌ『二年間の休暇』を応用した作品があり、またディケンズの再話と思われる作品もみつかった。これらの個別テーマについても、やはり発表媒体を意識しつつ今後具体的な考察を行っていきたい。
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