1999 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本の翻訳・再話と読者意識-児童文学への変容を中心に-
Project/Area Number |
09610549
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
佐藤 宗子 千葉大学, 教育学部, 助教授 (40162490)
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Keywords | 翻訳 / 再話 / 児童文学 / 翻案 / 改作 / 読者 |
Research Abstract |
1 (1)引き続き「明治翻訳文学全集」《新聞雑誌編》を入手し、児童文学分野への翻訳・再話がなされているものの調査を行った。今回の配本にはスティーブンソンやキャロルなど児童文学の古典作品の作者が含まれていた。一般向雑誌と少年少女誌への紹介がどのような判断で行われていたか、また今日と違った紹介の状況のメーテルリンクやドーデーについて、何が再話の継続を阻んだのかといった課題も浮かび上がってきた。 (2)「小波お伽全集」については、原拠が伝承文学であることが多いが、幼年以上の読者について、少年向けと少女向けの意識の区別が比較的顕著であることが確認できた。これはのちの講談社系雑誌での再話のあり方と異なる。いずれジェンダーの視点を入れた研究を深める必要があろう。 2 (1)スティーブンソン『宝島』については、特に昭和戦前・戦後を通じ普及度の高い高垣眸の再話に焦点を当て、彼の創作『龍神丸』や、久米元一やアニメ絵本の『宝島』再話を参照しつつ検討を行った。その結果、改作により読者の印象度も強くなり、また叙事詩的プロットを獲得し得ていることがわかった。1999年11月の日本児童文学学会研究大会でこの経過を発表、イギリス児童文学研究者の関心も集めた。 (2)大阪国際児童文学館等での調査で、この作品の翻訳もしている大仏次郎の関連する総作二点の資料を得た。上記高垣の例も合わせ、翻訳・再話と新たな創作の関連を今後検討していきたい。 3 今年度購入した最近の少年少女向け冒険文学のシリーズからも、何点か、再話の方法の模索状況が探れることがわかった。またその方法が、直接参照したわけではないと推測されるものの、伝統的に再話者たちがとってきた方法との連関も見うけられる。アニメ作品ともども、近年の再話状況の把握も、継続していきたい。
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