2000 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本の翻訳・再話と読者意識-児童文学への変容を中心に-
Project/Area Number |
09610549
|
Research Institution | CHIBA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
佐藤 宗子 千葉大学, 教育学部, 助教授 (40162490)
|
Keywords | 児童文学 / 翻訳 / 再話 / 翻案 / 再創造 |
Research Abstract |
1 引き続き「明冶文学全集」《新聞雑誌編》を入手し、児童文学分野への翻訳・再話がなされているものの調査を行った。これで十回までの配本が終了したが、当初の予定と内容に若干の違いもあり、補足的に「明治の児童文学」翻訳編も入手した。これらをもとに、初期移入についての概括を行った。 2(1)以前から研究を続けていたウィーダ『フランダースの犬』について、特に他メディアとの関連として、テレビアニメ版とリメークされた映画版まで視野に入れた各再話の改変を対照させた。そこからは、「少年」イメージの典型化や、性や金銭にまつわるタブーの問題、また救済のあり方と「死」の意識についての西洋との差異などがあらためて日本的再話の特徴として把握しえた。これについては、2000年夏に開催された国際比較文学会の大会で研究発表を行った。 (2)前年度の研究を発展させ、スティーヴンソン『宝島』については、高垣眸のみならず、大仏次郎の翻訳や再創造作品、近年の少年少女向け冒険文学シリーズに収録された宗田理による再話まで対象を広げての検討を行った。そこからは、主人公の複数化、「少年」と「少女」イメージの関わり、金銭に関するタブーの存在などが問題群として浮かび上がってきた。これについては2000年秋に開催された日本比較文学会東京支部の大会で発表を行った。これらの成果は今後、日本の創作における手法との関連や、近代的「子ども」観など、より大きなテーマとして継続的に追究されるべき問題だろう。 3「子ども」観にまつわるタブーの問題や、男性-女性の軸は、今後とも重要な研究の視点として、翻訳・再話を考える際に念頭においておきたい。またカノン形成の問題も、課題としていきたい。
|