1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09620004
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
神保 文夫 名古屋大学, 法学部, 教授 (20162828)
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Keywords | 私法 / 江戸幕府法 / 民事訴訟手続 / 金銀出入 / 判例法 / 公事法御定書 / 評定所 / 大坂町奉行所 |
Research Abstract |
研究実施計画に従って、初年度に調査収集した史料を整理しつつ、更に東京・京都・大阪・神戸等の図書館・資料館等を中心に江戸幕府法(主として評定所・町奉行所・大坂町奉行所の裁判法)に関する未公刊史料の採訪調査を継続するとともに、設備備品費により江戸時代の法制史料(版本・写本類)を購入して研究を進めた。主要な成果は以下の如くである。 第一に、安永年間に評定所留役勘定組頭江坂孫三郎が著した「憲府記原」の写本(京都大学法学部蔵)を検討し、評定所の起立ないし江戸時代中期に至る制度的発展に関して新知見を得た。 第二に、「公事方御定書」(寛保2年成立)に先行する裁判法規集ないし判例要旨集というべきものとして、「評定所裁許覚書三十七ヶ条」(東京大学法学部蔵)及び「享保三戌年諸裁断改候覚」(国立国会図書館蔵)の二点を発見し、これらがいわゆる「御仕置部類」系評定所判例集に基づいたものであることを明らかにした。 第三に、江戸時代前期における大坂町奉行所の民事裁判法制を知り得る「大阪御仕置録」(財団法人三井文庫蔵)及び「大坂御仕置覚書」(大阪府立中之島図書館蔵)を見出すとともに、後者は前者を増補したものであることを確認した。 第四に、上記の諸史料及びその他の収集史料の検討により、江戸幕府評定所及び大坂町奉行所の民事裁判法が近世私法史において決定的に重要な、いわば普通法的地位を有するものであったことを再確認し、吉田正志教授の論文「盛岡藩『文化律』と借金銀取捌法について」に対する書評の中でその論旨を展開した。
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Research Products
(1 results)