1997 Fiscal Year Annual Research Report
転封の研究-日本型の官僚制原理の考察と近世国家像の再構築-
Project/Area Number |
09620011
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
谷口 昭 名城大学, 法学部, 教授 (20025159)
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Keywords | 転封 / 大名 / 領知法 / 家中法 / 藩法 / 日本型の官僚制 |
Research Abstract |
平成9〜10年度を助成期間とする本研究は、転封によって「藩」という領域を横断する大名「家中」の法と制度の実態を、領知移動という動的な観点から明らかにし、もって幕藩制社会の構造と、近代以降につながる日本社会の特質に新知見を加えようとするものである。 この目的のため9年度は、藩名でいえば山形・佐倉・前橋・館林・小諸・浜松・掛川・淀・亀岡・福知山・篠山・柏原・宮津・舞鶴(田辺)・高梁・福山・唐津・延岡・中津・日田等、可能な限り広範な現地史料の調査と蒐集を実施し、併せて国立公文書館・東京都立大学付属図書館・学習院大学史料館・京都大学附属図書館・同文学部博物館・同法学部図書館・京都府立総合資料館・京都市歴史資料館等の所蔵史料を調査した。この結果、地方史誌(資料編)などの刊行物を含め、所蔵機関でマイクロフィルム化された古文書類のプリントおよびフィルム複製、それらに自己撮影分の史料を加えると4万コマを超える文書史料を蓄積したことになる(所要経費には研究機関の支出する教員研究費も充当)。 史料の蒐集を端緒とする本研究は、関係史料の存在ないし伝存の形態を辿るだけでも近世社会の構造を論ずる可能性を秘めている。まだ分析は部分的であるが、官僚型大名の家中の創出、領知移動の具体相、移動先における領知の法とシステムの形成過程を叙述し、幕藩官僚たる大名家中の特質を論じうる感触を得た。これらの論点については、10年度における追加調査と蒐集史料の分析およびデータベース化を通じて、まとまった論文(集)に結実させることとなる。その素材を構成するため、伝統的な史料公刊の形ではあるが、本課題の追求には最も相応しい大名家の一つ、松平(大給)家文書を完成させたのが9年度に報告すべき研究実績である。
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