1998 Fiscal Year Annual Research Report
知的障害を持つ人の自己決定支援のための法的環境整備に関する研究
Project/Area Number |
09620021
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Research Institution | Hokuriku University |
Principal Investigator |
初谷 良彦 北陸大学, 法学部, 教授 (20208531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古屋 健 群馬大学, 教育学部, 助教授 (20173552)
三谷 嘉明 北陸大学, 法学部, 教授 (80014760)
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Keywords | 知的障害 / 自己決定 / 意志決定能力 / インフォームド・コンセント / 黙従行動 / 代諾 |
Research Abstract |
知的障害を持つ人の自己決定権を保証できる法的・制度的環境を整備する上で,クリアしていかなければならない問題点を指摘し,検討を加えた.最大の問題点として,知的障害者の自己決定能力判定の在り方,および能力が欠如していると判定された場合の代諾の在り方という2点が指摘できる.主として前者の問題について,インフォームド・コンセントにおける意思決定能力(competency)判定をモデルに詳細な検討を加えた. 意思決定能力は責任能力や契約能力とは異なる概念で,有効なインフォームド・コンセントの成立要件のひとつとして位置づけられる.しかし,その判定の在り方については現在までさまざまな議論がなされてきたが,コンセンサスが得られていない.文献研究の結果,この問題の主な論点として6点が指摘された.その中から,知的障害者の自己決定権と最も関連が深いと考えられる一般的意思決定能力と特異的意思決定能力区別の問題,心理学的意思決定能力の判定基準の問題,スライド制基準の問題について検討を加えた. また,知的障害者に特有な問題のひとつに,黙従行動傾向がある.知的障害者は施設生活や介護を受けてきた経験から,あるいは無能力と見られることを避ける防衛的態度から,権威者に対して服従する傾向がある.これは自律的でない同意を生む恐れがある.これを予防するためには,意思決定能力判定のシステムを整備することに加えて,知的障害者および医療・福祉関係者に対する人権教育と啓蒙が不可欠である.
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