1998 Fiscal Year Annual Research Report
国際刑事裁判制度の組織原理と機能に関する研究-国家管轄権との交錯と協働を中心に
Project/Area Number |
09620024
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
古谷 修一 香川大学, 法学部, 助教授 (50209194)
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Keywords | 国家刑事裁判所 / 国際刑事法 / 管轄権 / 補足性原則 / トリガー・メカニズム |
Research Abstract |
本年度は、常設的な国際刑事裁判所の組織原理と機能に関し、特に国家管轄権との関係を中心に研究を実施した。特に、国連国際法委員会(ILC)、国連総会が設置した準備委員会(Preparatory Committee)、同裁判所規程を採択した外交会議における議論を分析することにより、1,補足性原則(Complementarity)の機能、2,トリガー・メカニズム、3,国家の協力義務の三点から、国家管轄権との関係を明らかにした。 1, 裁判所と国家管轄権との直接的な関係を規律する補足性原則については、ILCおよび準備委員会の議論を検討した結果、国家主権を重視する見解から、裁判所の管轄を前面に出す見解へと徐々に以降したことが明らかとなった。この結果、補足性原則が認められながらも、その当否を裁判所側が判断するという権限配分が想定されるようになり、これによって、国際刑事裁判所が国内訴追行為あるいは国内裁判の当否を審査する上位裁判所に類似する機能を果たすことが実証された。 2, トリガー・メカニズムについては、安全保障理事会の提訴、検察官による職権に基づく捜査開始等が、実質的に国家管轄権の範囲を縮小させる機能を果たすことが明らかになった。それと同時に、国家および安全保障理事会の政治的な考慮が、裁判所の公正・中立的機能と抵触する可能性も明らかとなった。 3, これに対して、国家の協力義務は、旧ユーゴ国際刑事裁判所と比較すると、国家の司法機関が協力を実施する上で、裁判所の命令がどのような法的効果を国家機関に及ぼすのか不明確である。また、国家機関を通さずに裁判所が独自に捜査、証拠収集を行う権限について検討した結果、国家安全保障に関する配慮や現地捜査に対する関係国家の同意の必要など、多くの点で国家管轄権の側に比重がかかっていることが実証された。
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Research Products
(1 results)