1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09620036
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河内 宏 九州大学, 法学部, 教授 (40037073)
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Keywords | 民間の自主性 / 行政審査 / 専門家 |
Research Abstract |
民間活力活用のための法人制度構築のためには、団体の活動は民間の自主性に委ね、行政は、団体の活動が成果を挙げているか否かを審査し、補助金・助成金を増減するかを判断する、というような役割分担が必要である。しかし、我が国ではこの役割分担が必ずしもうまく行っていない。近時、入所者への体罰や薬の濫用が問題となった福島県の知的障害者施設の例を見ると、民間に専門性をもつ有資格者が少ないという問題がある。つまり、この施設では、全くの素人が知的障害者を処遇しており、これらの者への体罰や薬の濫用が問題となった。団体の活動は民間の自主性に委ねるという場合、民間に専門性を備えたマンパワーが十分に存在していることが前提となる。前述の施設では職員が専門家でないため、上司から体罰を強制されても、十分に反論できなかった、ということである。以前私は、ドイツで、高齢者、少年非行・離婚に関する援助団体を調査したことがあるが、これらの団体では、専門家が活動していた。これら専門家の活動が成果を挙げれば、行政が補助金を増やし、新たに専門家を雇うこともできるという仕組みであった。この場合、専門に見合う人件費が補助金という形で増やされるわけである。我が国では、例えば、知的障害に関する専門家が民間で専門に見合った給与を受けることが困難なため、専門家が育たず、このため、知的障害者施設では専門家を雇うことができないという悪循環になっている。民間活力活用のためには、専門に見合った人件費を行政が援助するという仕組みを作ることが緊急の課題である。行政による審査に関していえば、ここでも職員が短期間で職場を変わるため、継続的・専門的審査体制の構築が困難となっている。審査の専門家の要請が緊急課題といえる。
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