1998 Fiscal Year Annual Research Report
交通不便地における裁判機関配置の適地性の研究-簡易裁判所の果たすべき役割、その整理統廃合と住民の裁判を受ける権利-
Project/Area Number |
09620038
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
佐野 裕志 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (10145451)
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Keywords | 司法制度 / 裁判制度 / 民事調停 / 簡易裁判所 / 裁判を受ける権利 / 簡易裁判所判事 / 裁判所書記官 / 日本弁護士連合会 |
Research Abstract |
3年計画の2年目にあたるため、昨年度に引き続き必要な資料の収集とその検討および実態調査を行った。 1. (資料の収集と検討)昭和62年法律第90号「下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律」に関する資料を重点的に収集し、検討を行った。 この昭和62年改正は、第二次世界大戦後に設置された簡易裁判所の配置についての、初の本格的な改正であった。戦後の刑事訴訟法の改正に伴い、警察・検察による強制的な捜査段階には、常に令状が必要とされるようになったため、この令状発令の必要性から、当時の警察署単位で簡易裁判所が設置された。その後、人口の都市部への集中や交通事情の変化などにより、当初の設置場所が事態にあわなくなってきた。そこで簡易裁判所の配置の再検討が問題となってきたのであるが、これに伴い、整理統廃合も実施されるようになってきた。このような見解は、制度を設営する側から見れば合理性を有するが、過疎地や交通不便地からすると、自分の住む地区に裁判所がなくなることを意味するのであるから、憲法上の裁判を受ける権利の侵害が生じるおそれがある。このような観点から、昭和62年改正をもたらした事情を詳しく検討し、その快晴時に、裁判を受ける権利に対してどのような配慮がなされたのかを検討した。この整理統廃合は現在も進行中の問題であるので、来年度にかけても引き続き検討を続けていく。 2. (実態調査)平成10年11月6日、香川県高松市で日本弁護士連合会主催による「第17回私法シンポジウム」が開催されたので、同地に出張し、多くの資料や有益な知見を得ることができた。その前日から全国から参加した弁護士・研究者とともに研究会を持つことができ、ほかでは得られない資料を得ることができた。 簡易裁判所における事件数の実態について、司法統計年報を利用した毎年の変化の調査を、昨年度に引き続き行った。 また新・民事訴訟法(平成8年度法律第109号、平成10年1月1日施行)により、新たな役割をおった簡易裁判所の実際の機能については、簡易裁判所裁判官や書記官とともに定期的な研究会をもって研究を続けている。 3. (次年度以降の計画)基本的には本年度の研究を引き継ぎ、資料収集と分析および実態調査を行い、本研究を集大成する。
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