1997 Fiscal Year Annual Research Report
タイにおける国民的官僚制の成立:農業省官僚3000名の人事記録が物語ること
Project/Area Number |
09620068
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
玉田 芳史 京都大学, 東南アジア研究センター, 助教授 (90197567)
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Keywords | タイ / 近代国家形成 / 官僚制 / 農業省 / 人事記録 |
Research Abstract |
20世紀前半のタイ農務省官僚の人事記録データをタイ語版Excelを用いてパソコンに入力した。1921年時点での在職者ならびに1921年から1940年にかけての入省者であり、総数は3,026名であった。入力したデータは氏名、位階官等、父親の氏名、生年月日、出身地、最終学歴、入省の日付・ポスト・賃金、最終的なポスト・賃金(退職時あるいは1940年時点)である。データ入力作業と並行して、近代国家の形成に関する研究書を読み進めた。 これにより、当時の官僚は半数近くが首都の出身者であることが判明した。また、学歴では中等教育を受けたものが圧倒的多数を占めており、中等教育の最終学年を修了したものは少なく、高等教育を受けたものも少ないことが分かった。ポストが高くなるほど、官僚の子弟で首都出身のものの割合が増えている。一握りの留学経験者にも同様な傾向がみられる。学校制度を通じて全国から有為な人材を徴募した明治日本よりも、白人が要職を握り中堅以下には現地人を登用した植民地官僚制に近いことが分かってきた。その一部については、東南アジア史学会全国大会(平成9年6月18日)とタイ・セミナー(同年7月20日)で報告した他、木村・広岡編『国家・民族・文明システム』(仮称、ミネルヴァ書房、編集作業中)の1章として寄稿した。 目下のところは、教育のデータは最終学歴しか入力しておらず不十分であるため、中等教育以上の学歴補足入力しつつある。今後は、これらのデータを用いて、タイにおける近代国家や国民国家の形成について考察を進める予定である。
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