1997 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本のアジア主義の歴史的研究-日清戦争による変容を中心として-
Project/Area Number |
09620072
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
黒木 彬文 九州大学, 法学部, 講師 (60009850)
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Keywords | 興亜会 / 興亜主義 / アジア主義 / 末広鉄腸 / 自由民権運動 / 日本立憲政党 / 小国論 / 義勇軍志願運動 |
Research Abstract |
1997年度は主に興亜会、亜細亜協会関係の資料調査、収集にあたった。 1、収集したのはおもに末広鉄腸の著書、花房義質関係文書などである。 2、興亜会、亜細亜協会の大阪、神戸での活動を知りたいと思い、大阪で発行された「日本立憲政党新聞」(明治18年-22年)を収集し、一部を分析した。その過程でえた知見は次のようなことである。 日本立憲政党新聞は、自由党の機関誌・自由新聞の大阪版と思われているが、読んでみると、自由新聞とは違う主張をしていることが分かった。 すなわち、明治17年の甲申事変について、自由新聞は国権拡張論であるが、立憲政党新聞はこれと異なり、日本の朝鮮独立援助・開化促進(これを立憲政党新聞は興亜主義と呼ぶ)は将来、朝鮮、清国との戦争に結びつくとし、日本の大陸進出に反対する。これは小国論であり、あきらかに自由新聞とは反対の対外政略である。 したがって、日本立憲政党新聞は、この時期に旧士族、民権論者が起こした日清開戦に備えての義勇軍志願運動にかんする報道もほとんど取り上げていない。それどころか、甲申事変時の清国人による日本人救助の事実を報道し、清国敵視の論調をかかげる他の民権派新聞とは反対に、日清友好の観点から編集をしている。 従来、この時期の自由党は国権拡張論に転換するといわれてきたが、すべての民権論者が国権拡張論に変わったわけではないことがこれで明らかになった。次年度はこの小国論の政治、経済構想を明らかにすることをとおして、逆にこの時期の興亜主義、アジア主義の特徴を解明してみたい、と考えている。
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