1998 Fiscal Year Annual Research Report
特許制度の研究開発投資、経済成長および社会的厚生への影響
Project/Area Number |
09630020
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
二神 孝一 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 助教授 (30199400)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大日 康央 大阪市立大学, 経済学部, 助教授
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Keywords | 研究開発投資 / 特許 / 経済成長 |
Research Abstract |
今年度は,新しい質の財を開発する研究開発投資と、それをコピーする活動の二つを考慮に入れたモデルを構築し、それのシミュレーションを行った。新しい質の財を開発する誘因は、それを開発したことで市場を独占することによる利益であるが、開発した製品をコピーされると同じような財が市場に供給されることになり、当初獲得していた独占の地位を奪われることになる。よって、新製品のコピー活動は新製品を開発する誘因を減少させるだろう。さらに、家計が財の質の向上とともに財のバラエティに対しても効用を感じているときには、新しい質の財から得る効用は、それまでの段階で存在した質の財のバラエティの多さによって制限を受けてしまう。したがって、新しい質の財を開発して独占の地位を獲得しても、それによって得る独占利潤は旧製品のバラエティの多さによって制限を受ける。このような環境では次のような結果を得た。第1に、市場の大きさの拡大は新製品に対する開発に誘因を増すが、同時に財のバラエティも増やすために新しい質の財を開発する誘因を全体として下げてしまうことが有り得る。よって、小さな市場規模の経済が成長するのが困難であるのと同様、大きな市場を持つ経済が早く成長するとは限らない。第2に、特許制度を厳格に適用することでコピーの容易さを低下させると、コピー活動への資源配分が減少させ、それを新製品の開発に向けることができる。したがって、先の市場の拡大と同じような効果を発生させる。すなわち、特許の適用の厳格化は新製品の開発を遅らす可能性もあるのである。
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