1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09630031
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
玄田 有史 学習院大学, 経済学部, 助教授 (90245366)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
国友 直人 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (10153313)
石川 経夫 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (90107483)
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Keywords | 自営業 / 資産形成 / 所得分配 |
Research Abstract |
1990年代以降、中高年自営業者の世帯数が急速に減少しつつある。その理由を「全国消費実態調査」(1989年・1994年)の個票データを用いて検討した。自営業減少の理由として、理論的には世帯主の高齢化に伴うリスク回避態度の強まり(年齢効果)と、自営就業における流動性制約(資産効果)の存在が考えられる。55歳未満の世帯主について、1989年から94年にかけての自営業就業率の減少理由に占める両要因の貢献度をプロビット分析により計測した。その結果、自営率減少の約65%は年齢効果の低下によるものであり、20%弱は資産効果の低下によることがわかった。 また自営業の所得形成の実態を明らかにするため、自営業収益関数の推計を行った。その際、世帯毎の起業家精神の相違といった統計的には観察できない要因が自営業選択に影響を及ぼす場合、実際に観察される自営事業収入と世帯主の年齢、世帯実物資産額、就業産業などの関係にはセレクションバイアスが含まれることが考えられる。そこでセレクションバイアスを取り除くため、収益関数の推計を最小二乗法の他、ヘックマンモデルによる推計も行った。 推計結果は、自営業主にとって、年齢の上昇は経験やノウハウの蓄積などにより事業収入の期待収益率を上昇させることを示している。しかし、年齢増加による収益上昇効果は1989年から94年にかけて大きく減退している。そのために世帯主は年々リスク回避的となり、年齢を経るにつれて自営業を選択もしくは継続する確率が低下したと考えられる。また資産市場に流動性制約が存在するもとでは、実物資産の多い自営業世帯ほど担保価値の大きさや資産の有効利用などが可能になるため、自営業収益率は高くなる傾向が見出される。しかし、いわゆるバブル経済の崩壊による家計の実物資産価値の下落は自営業収入を大幅に減少させたために、この点も自営就業の誘因を低下させたと考えられる。
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