1997 Fiscal Year Annual Research Report
資本市場の不完全性と金融政策の波及経路-貸出チャンネル・預金チャンネルの相対的重要性とデリバティブの影響
Project/Area Number |
09630037
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
粕谷 宗久 神戸大学, 経済経営研究所, 助教授 (70282944)
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Keywords | 金融政策 / 政策波及経路 / 預金チャンネル / 貸出チャンネル |
Research Abstract |
金融政策の政策波及経路の問題について、過去の研究を、簡単に整理すると、貸出の金融政策効果の把握については、King(1986)Journal of Money,Credit and Banking、Konishi,Ramsey,and Granger(1993)で、貸出、預金、GNPを含むVARモデルを推計し、貸出チャンネルよりも預金チャンネルで説明される部分の大きいことを示している。こうしたVAR手法については、貸出の変化が、金融政策や貸し手のバランスシートといった供給サイドの影響なのか、景気といった需要サイドの要因なのか明らかでないといった問題、すなわち因果性あるいは識別性の問題、を指摘できる。 Romer and Romer(1990)では、識別性・因果性の問題を回避するために、特定の金融引き締め時期に着目し、貸出と預金でどちらが引き締めに対して早く反応するかを測定した結果から、預金チャンネルの方が重要との結論を下している。 一方、Kasyap,Stein,and Wilcox(1993)、Ueda(1993)、岩田(1994)、岩本(1994)、Horiuchi and Shimizu(1996)等では、資金需要の変化は全ての資金調達手段に影響を与えるが貸出供給の変化はその他の調達手段の供給サイドに直接影響を与えないことに着目し、銀行貸出とCP発行高の比率を貸出供給を表す変数として用いることで、金融引き締め期の貸出が在庫投資、設備投資に与える影響を測定、貸出チャンネルの重要性を強調する結論を得ている。 本年度の研究では、各研究の数量的比較をするための問題点の洗い出しを行った。その結果、金融政策の波及経路の実証研究においては、識別性・因果性の問題が常に重要であることが示唆された。こうした観点から、それらの点に関する事前的分析を踏まえたうえで、それらの点をも織り込んだ形でミクロベースの分析を行うことの妥当性を検討することもより必要と考えられ、こうした観点も踏まえて今後の研究をすすめていくこととした。
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