1998 Fiscal Year Annual Research Report
戦間期日本における社会研究センター(大原社研と協調会)の分析
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09630054
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Research Institution | The Faculty of Sociology of Hosei University |
Principal Investigator |
高橋 彦博 法政大学, 社会学部, 教授 (70061083)
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Keywords | 東京政治研究会 / 協調会 / 社会哲学 / コーポラティズム / 労働政治 / 尾高邦雄 / 清水幾太郎 / 漆田敬一郎 |
Research Abstract |
戦間期日本における社会研究センターは、大原社会問題研究所と協調会に代表される。この二つの研究センターが残した著名な戦間期を一貫する記念碑的年鑑のほかに何種類もの年鑑が残されていて、いずれも短期間の観測結果の記録に過ぎないが、そこに、戦開期を通じる社会研究(Sozial Forschung)の視点が多様な研究者集団によって支えられていた軌跡を見出すことができる。戦間期日本における社会化成熟過程の測定として、今回は次の二つの研究テーマを設定した。 【東京社会科学研究所(東京社研)の社会哲学視点】1927年に設立され1934年に閉鎖された東京社研の研究業績として、『年報第一輯・社会科学と社会哲学』(刀江書院、1933年)がある。この業績は、東京社研前期において、いわゆる「福本イズム」に代表されるマルクス・レーニン主義が社会分析視点を欠落させている実態が経験的に把握された経過を踏まえてもたらされていた。「福本イズム」の克服は、後期東京社研において三木清の社会哲学視点に依拠してなされていた。東京社研における社会哲学攻究を基盤にして、東京社研閉鎖後であるが、清水幾太郎の『社会と個人』(刀江害院、1935年)と尾高邦雄の『職業社会学』(岩波書店、1941年)が発表された経過を明らかにできた。 【協調会前段階における労働政治論の試み】労働争議調停機関として協調会をとらえるのは妥当ではないことを明らかにした。協調会はなによりも社会政策研究センターであった。第一次世界大戦終了後、政党政治と普通選挙制度が展開される状況において、協調会は内務省出身官僚政治家の活動拠点となり、政友会に、あるいは民政党に密着する機関として機能していた。無産政党の結成過程において、協調会は、政治研究会と社会民衆党に接近し、リブ・ラブ主義(Liberarl-Labour izm)の提唱者となっていた。協調会発行の労働雑誌『人と人』の分析をつうじて、協調会における労働政治論の展開を跡付けることができた。
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