1999 Fiscal Year Annual Research Report
競争原理導入後の電力事業における安定供給の確保と原子力発電の維持をめぐる政策分析
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09630060
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
野村 宗訓 関西学院大学, 経済学部, 教授 (00198631)
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Keywords | 原子力発電 / 再生可能エネルギー / 安定供給 / 電力自由化 / ガス発電 / ダイベスティチャー / 発送電分離 / 長期エネルギー需給見通し |
Research Abstract |
1999年2月からEUの電力自由化が本格的に始動した。アメリカでもカリフォルニアをはじめ小売り完全自由化への動きがみられる。発送配電分離や会計上のアンバンドリングなどの措置を通して各国の発電部門と小売り供給部門に競争が導入されている。このような政策潮流のもとで原子力発電を以前のように政府の保護に基づき運営することは困難になってきた。世界的に原子力発電を市場メカニズムの判断に委ねるか、原子力政策の見直しを進める機運が高まっている。 スウェーデンでは既存の原子力発電所を停止させ閉鎖する決定が下された。これは1980年の国民投票で既に予定されていたことであるが、安定供給と雇用問題から先送りにされてきた。しかし、政府は経済的補償を手当てした上で閉鎖する方針を採用した。英国では発送電分離後に誕生した原子力発電会社が株式売却を通して民間企業であるブリティッシュ・エナジーとなった。同社は原子力発電のみならずガス発電などコストや効率性の観点から有利な電源を保有しょうとしている。アメリカでは自由化後に設備を売却するダイベスティチャー(ダイベストメント)が活発になっている。以前のように新規に設備を建設する手法よりも既存の設備を購入する方法が新規参入を促進するので政府もこれを支持している。このような戦略はグリーン・フィールドからブラウン・フィールドへの移行とも表現される。日本でも2000年3月に通産相から長期エネルギー需給見通しを改定する見解が表明された。4月から検討が開始され、総合エネルギー調査会での議論をふまえ1年後に結論が出される予定である。2000年までに16-20基の原子力発電所を建設する現行の目標は修正されるであろう。自由化が進展するなかで再生可能エネルギーの開発促進や環境問題を含んだ移行措置が重要な政策課題となる。
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