2000 Fiscal Year Annual Research Report
競争原理導入後の電力事業における安定供給の確保と原子力発電の維持をめぐる政策分析
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09630060
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Research Institution | KWANSEI GAKUIN UNIVERSITY |
Principal Investigator |
野村 宗訓 関西学院大学, 経済学部, 教授 (00198631)
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Keywords | 強制プール / 任意プール / 相対取引 / カリフォルニア / PJM / 停電 / 発電予備力 / 送電能力 |
Research Abstract |
2000年夏以降、需給逼迫により卸料金が高騰していた米国カリフォルニア州では1月に停電が発生し、大手電力会社の倒産という最悪の事態に直面している。カリフォルニア州の自由化の特徴は強制プールと任意プールを同時に適用した点にあるが、この点こそが制度設計における最大のミスである。大手3社は強制プールを通してだけ取引を行い、他の事業者はプールでも相対契約でも自由に取引を行える。大手3社の市場支配力を抑制する目的から次のような3条件が付与された。 (1)火力発電設備の50%を売却させる。(2)プール参加を義務付け、相対取引を禁止する。(3)2002年3月末まで小売り料金を凍結する。もし大手3社に相対取引が認められていたら、何らかの電力購入契約が成立していたはずである。 配電部門を持たずに発電のみを行う新規参入者はプールと相対の両方をにらみながら、有利な取引を選択できた。結果的に、条件(2)が市場支配力を持たないと想定された参入者にプール価格の操作を許す状況を生み出した。SDG&Eは小売り料金凍結が1999年7月に解除されていたが、大手2社(PG&E・SCE)は高騰した卸料金を小売り料金に転嫁できないために、逆ざやによって支払い不能に陥ったのである。電力政策としては当面、州外からの電力調達に依存せざるを得ない。送電管理の強化を図りながら、将来的には送電能力の拡充が期待される。公設のプールは2001年1月末に機能を停止したが、今後は長期相対契約の成長が可能となるような電力取引形態が望まれる。発電予備力の確保を事業者に義務付けた上で、すべての事業者がプールと相対契約を利用できるPJM型の任意プールに基づく取引方法が理想的であろう。カリフォルニアの経験から競争導入後における発電予備力と送電余力の重要性が一段と明白になった。
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