1998 Fiscal Year Annual Research Report
ソーシャルポリシーとジェンダーに関する実証研究-労働力の女性化の進展を中心に-
Project/Area Number |
09630062
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
深澤 和子 阪南大学, 経済学部, 教授 (30148572)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千葉 悦子 福島大学, 行政社会学部, 教授 (30217244)
木本 喜美子 一橋大学, 社会学部, 教授 (50127651)
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Keywords | 非伝統的職種 / 女性の職域拡大 / 施行管理労働 / 施行管理労働におけるジェンダー / 農家女性の起業 |
Research Abstract |
本年度は,女性にとって非伝統職として位置づけられてきた建設業の中でもとりわけその性格の著しい施工管理労働部門への女性の進出に関して,進出の背景・その実態・抱えている問題などについてケーススタディを通じた分析を行うとともに,農家女性労働に関しても新しい動きとしての農家女性の起業について聞き取り調査を行った.紙幅の都合上,ここでは,建設業の施工管理労働における女性の進出とそのジェンダー関係に見られる問題点について纏めることにする. 建設業での非伝統職への女性の進出は90年代に顕著になるが,今回調査対象としたゼネコン中堅企業も,1993年に初めて施工管理部門で女性を採用することになる.その際,当該労働に必要とされる資質である「明るく、はっきりものが言え、骨太、知的レベルが一定以上ある」ことを面接で確認した上で採用に踏み切っている。言うまでもなくこれらの資質は、下請労働者に指示を出したり、工程管理その他で適切な判断力を必要とする施工管理を行うためには男女を問わず必要とされるものであり、女性の採用に際しても同じ基準が用いられたということである。そして,少なくとも現在までのところ,行っている労働や修得した技術の顕著なジェンダー差は見いだせない.これは,現場の労働編成と深くかかわっており,この労働編成の工夫次第で女性が働きやすくかつジェンダー差のない労働を行うことが可能となるとともに,他方で,労働編成の失敗がセクハラや退職に結びつく条件にもなることを示唆している.しかし,継続という観点から施工管理労働におけるジェンダー差を見ると,女性にとっては,現在のように現場に長く張り付いた施工管理労働は,従来の家庭内での性別役割分業を前提にする限りとうてい不可能なものであり,専業主婦を背後に控えさせた男性とは全く異なることが明らかとなった.
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