1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09630095
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
藤井 宏史 香川大学, 経済学部, 教授 (00145038)
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Keywords | 日本銀行 / 金融調節 / ベースマネー |
Research Abstract |
本年度は、主に戦後の金融政策論争のサーベイと、それをもとに日銀の金融調節のワーキングを示すモデル化に力点を置いて研究作業を行った。その結果得られたいくつかの点を以下で列挙し、最後に今後の研究予定を述べる。まず、戦後の金融政策運営に関する論争のサーベイで得られたのは、以下のとおりである。 (1)論争は、日銀の金融政策運営の正確な理解と、代替的なベースマネー操作型政策運営方法に対する相対的優位性をめぐって展開されてきたが、近年、論争点の比重は日銀型政策運営の相対的優位性に移ってきていること。 (2)日銀型政策運営方法の相対的な優位性を判断するには、政策運営の相違による準備需要の短期金利弾力性の大きさの変化と、それによる短期金利の変動をどう評価するかが決定的に重要であること。 次に、日銀の金融調節のワーキングを示すモデル化の作業で得られた点は、以下のとおりである。 (1)モデル化に際しては、日銀の金融調節態度の正確な定式化に加えて。準備の積み調整を示す銀行の短期の資金運用態度を如何に定式化するかが重要であり、そのために銀行の資産運用行動を短期の積み調整行動と長期の預金・貸出調整に区分して考える必要があること。 (2)銀行の短期の積み調整行動は、積み期間内で如何に効率的に法定準備を平残で積むかという意味で動学的な最適化行動とみなせるが、その中で資金繰りの予想も同時に変化するように定式化すべきこと。 現在、単純な2期間モデルを構築した後、多期間での動学モデルの定式化を試みているが、積みの調整費用と資金繰りの予想形成を如何に定式化するかが課題となっている。次年度は、この多期間の積み調整モデルを完成させて数値シミュレーションによる比較動学分析を試みるとともに、日銀型金融調節の政策上の功罪をさらに掘り下げて検討し、それらの成果を論文としてまとめる予定である。
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