1998 Fiscal Year Annual Research Report
南米新興市場(エマージング・マーケット)の発展と米国金融機関の国際的活動
Project/Area Number |
09630096
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
川波 洋一 九州大学, 経済学部, 教授 (80150390)
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Keywords | 投資銀行 / 新興経済圏 / 国際資本移動 / 金融システム / 国際金融市場 |
Research Abstract |
本研究における課題を追究した結果得られた知見は次のような点である。 一つは、97-98年の新興経済圏危機のなかで国際金融機関の新たな活動が脚光を浴びるようになったことである。すなわち、危機に陥った新興経済圏諸国における金融機関の破綻と処理の過程で資産評価や法的手続きにおける財務アドバイザー活動を行うことによって、資産の移転を促進する業務がそれである。たとえば、投資銀行は、南米諸国、日本、韓国、タイなどにおける破綻金融機関の売却を斡旋し、それを欧米の投資家につないでいく役割を果たしている。韓国におけるソウル銀行や第一銀行、タイにおけるバンコク・メトロポリタン銀行やサイアム・シティー銀行、日本における日本長期信用銀行は、売却の財務アドバイザーとして米系の投資銀行を選んだ。投資銀行によって、新興経済圏諸国の金融システムのリストラが断行され、一方でこれら金融機関は破綻金融機関の切り売りによって巨額の収益をあげる。財務アドバイズにもとづく、こうした金融機関それ自体の売買業務は、投資銀行業務にもとづく国際金融業務の大きな柱になりつつある。 もう一つは、国際資本移動の拡大のなかで進行してきた金融のグローバリゼーションを推進してきた金融機関の国際的活動とは、欧米の巨大金融機関(特に投資銀行)であったということである。とりわけ、新興経済圏諸国に対する金融市場開放要求は、ウォール街、財務省、IMF・世界銀行の緊密な連繋のもとに進められている。本研究のなかで、こうした要求は、間接金融優位の途上国の金融システムを間接金融優位の金融システムに転換させようとする要求であり、それによって国際的に活動する巨大投資銀行にとってのプレイング・フィールドを確保しようとする動きであったということが明らかになった。
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