1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09630099
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Research Institution | SEIJO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
油井 雄二 成城大学, 経済学部, 教授 (70115153)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田近 栄治 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (10179723)
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Keywords | 社会保障 / 社会保険 / 健康保険 / 医療 / 介護保険 / 国と地方 / 地方財政 |
Research Abstract |
本研究の目的は,今後の高齢者社会保障において所得保障とともにますます重要な意味を持ってくる実物サービスの提供すなわち高齢者医療・介護の問題について,次の2つの視点から考察することである。すなわち,第1は高齢者社会保険の経済分析である。保険によるモラル・ハザードの問題とともに,わが国の高齢者保障の予算,制度,運用の実態などを検討することである。第2の分析は地域からみた高齢者の医療と介護である。とくに,いくつかの地域を選び,国と地方の財政関係の実態を明らかにし,国と地方の機能分配について考察する。 2カ年にわたる研究期間においては既存研究の理論的検討とともに,県・市町村の医療・介護の第一線の担当者および民間の高齢者サービス提供者からヒアリングを行い,地域から見た社会保障の実態,問題の把握に努めた。研究成果は2つの論文にまとめられている。 第1の問題については,国民健康保険を対象に保険機能を失った現行制度の実態を明らかにし,さらにその背後には保険者である市町村に対する様々な財政支援措置が市町村の責任を曖昧にしている側面があることを指摘する。この問題は介護保険にそのまま引き継がれており,制度の見直しの必要性が強調される。 第2の問題については,地域の医療保険である国民健康保険と老人保健制度の連結収支表の作成を通して,医療保険財政の実態を明らかにした。とくに市町村間格差に注目してある県下の5市町村の事例研究を行い,医療保険財政としては,本来,苦しいはずの小規模の町村ほど,手厚い制度的な財政支援により「健全」であるという,わが国医療保険財政の実態と制度上の問題を明らかにした。これは今後の制度改革に重要な示唆を与えるものであり,さらに対象市町村を拡大して分析を補強したうえで論文にまとめ発表する予定である。
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