2000 Fiscal Year Annual Research Report
生態学的シミュレーションによる組織間関係の進化の研究
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09630111
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Research Institution | University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 伸夫 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (30171507)
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Keywords | エコロジカル・モデル / コンピュータ・シミュレーション / マルチ・エージェント / 学習曲線 / 複雑系 / ゲートキーパー / 製品開発論 / コミュニケーション競争モデル |
Research Abstract |
組織間関係の形成過程を生態学的モデルの観点から分析するために、一昨年度、組織内エコロジーの分析が一区切りついたので、昨年度からその成果を基にして、組織間エコロジーのコンピュータ・シミュレーションに取りかかっている。今年度はさらに組織学習論との関係で学習曲線に関する理論的な研究も行い、組織間関係の分析にmulti-agent系のコンピュータ・シミュレーションを用いた研究を続けた。複雑系(complexity)の分野を象徴するものとして知られるmulti-agent系シミュレーションは、最近、幅広い分野で試みられている。ここでいうエージェントとは、ユーザの設定したルールに基づいてコンピュータ上で行動する主体を指していて、multi-agent型ではエージェントが複数いて、そのエージェント同士が互いに影響を与え合う。そのため、ルール自体は簡単なものでも、個別エージェントの行動を積み上げた全体では予測できない複雑な動きをすることになる。 シミュレータとしては、複雑系のメッカ、米国SantaFe研究所で開発されたSwarmのコンセプトを継承しつつ、日本語環境で利用しやすいmulti-agentシミュレータとして開発されたABS(Agent-Based Simulator)を使って、multi-agent型のモデルとして「コミュニケーション競争モデル」(communication competition model)を開発した。これによって、エージェントがクラスターを形成していくプロセスやスピード、さらにはコミュニケーション能力の高いエージェントの果たしている役割の分析などができるようになった。このことで、従来、製品開発論の分野で論じられてきたゲートキーパーの機能について、より詳細な分析をすることが可能になり、現実の組織現象との対応もより自然につけられるようになった。こうした成果の一部は、共著の書物『組織と意思決定』の中でも取り上げられている。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 高橋伸夫: "ドイツの鉄道改革と資金調達スキーム(前編・後編)"運輸と経済. 60・4 60・5. 59-71-38-44 (2000)
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[Publications] 高橋伸夫,清水剛: "合併後の組織統合をゲーム理論で解く-経営組織の中の囚人のジレンマ状況-"中山幹夫,武藤滋夫,船木由喜彦編『ゲーム理論で解く』(有斐閣). 1-12 (2000)
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[Publications] Nobuo Takahashi: "Business administration"An Introductory Bibliography for Japanese Studies. Vol.12 Part I. 129-147 (2000)
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[Publications] 高橋伸夫: "ぬるま湯的体質に見る人と会社の相性"東京大学公開講座 相性(東京大学出版会). 75-104 (2001)
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[Publications] 高橋伸夫: "学習曲線の基礎"経済学論集(東京大学経済学会). 66・4(印刷中). (2001)
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[Publications] Nobuo Takahashi: "Effective temperature hypothesis and lukcwarm feeling in Japanese firms"International Journal of Management Literature. 1・1(印刷中). (2001)
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[Publications] 高橋伸夫: "鉄道経営と資金調達スキーム-経営破綻を未然に防ぐ視点-"有斐閣. 196 (2000)
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[Publications] 高橋伸夫(編著): "超企業・組織論"有斐閣. 275 (2000)