1998 Fiscal Year Annual Research Report
事業部の資金管理と事業部貸借対照表の関係に関する実証的研究
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09630127
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Research Institution | Tsukuba University |
Principal Investigator |
小倉 昇 筑波大学, 社会工学系, 教授 (10145352)
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Keywords | 事業部制 / 業績管理会計 / キャッシュフロー管理 / 利益責任単位 |
Research Abstract |
近年、企業を事業部門別に管理する組織(事業部)のあり方が顕著に変化してきている。この動きを管理会計の視点から見ると、従来の利益責任センタ概念に依拠するものから、投資責任センタへと考え方がシフトしてきていると受け止めることができる。 本研究では、上記のような動きを事業部制の変貌としてとらえ、米国における関連研究をサーベイするとともに、変化の際だつ日本企業について、組織変化の形式的・表面的な観察ではなく戦賂的な意図がどのように反映されているのかを実態を調査し、組織の変化に対応して多期間的な管理会計尺度の採用が重視されていることを仮説として提示した。また、1985年から1995年の間に事業部制からカンパニー制に移行した企業を訪問調査し、これらの企業に、事業部毎またはカンパニー毎の貸借対照表(以下、事業部B/Sと略称)を作成し、社内資本金制度を採用する傾向が強いことを指摘した。 事業部B/Sは1960年代から観察される日本企業に特有の管理会計制度であるが、1980年代以降これを採用する企業数が顕著に増加していること、この時期に事業部B/Sを採用した企業には事業部P/Lと事業部B/Sを併せて用いることによって、事業部のキャッシュフローの管理まで考えようとするアイデアを有していることを調査による観察から導いた。事業部別のキャッシュフロー管理はときを同じくして米国の企業でも観察されるようになることがいくつかの文献で報告されており、このような米国企業の場合、経済的付加価値(economic value-added)という管理会計尺度の採用が顕著に見られるとされており、米国企業における経済的付加価値の機能が日本企業における事業部B/Sの機能と共通性が高いことを論証することができた。
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