1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09640118
|
Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
横田 佳之 九州大学, 大学院数理学研究科, 講師 (40240197)
|
Keywords | 量子不変量 / Heegaar分解 / θm-曲線 |
Research Abstract |
量子不変量とは、各コンパクトリー群に対して定義される三次元多様体の位相不変量で、Wittenによって提唱され、Reshtikhin、Tursev等によって定式化されました。この不変量はその定義から複素数に値をとりますが、リー群SU(2)の場合にはとくに代数的整数になることがMurakamiによって示され、漸近展開を通じて三次元多様体の不変量の無限列、すなわち多項式不変量が得られるという事実がOhtsukiによって示されました。本研究の目標は、他のコンパクトリー群に対応する量子不変量に対しても、同様の漸近展開を通じて三次元多様体の不変量の無限列を構成することでしたが、この目標はLeによって独立に達成されてしまいました。そこで本研究では、もう一つの問題意識、すなわち不変量を結び目・三次元多様体論に応用する観点に絞って考察を進め、以下のような成果を得ました。 ・ 三次元多様体のHeegaard分解の新しい不変量の構成 三次元多様体のHeegaard分解の理論は、古くからPoincare予想への正攻法として位置付けられ、Waldhausenによる三次元球面のHeegaard分解の一意性の証明など、三次元多様体論で最も深いと思われる内容を豊富に含んでいます。とくに上記の不変量は、いままで方法論のなかったHeegaard分解の安定同値問題に対する応用が期待され、三次元多様体論への貢献度は大きいと考えます。 ・ ある種の空間グラフの多項式不変量の構成 これは副産物というべき研究ですが、ユニタリー群に対応する量子不変量を定式化するときに用いた議論を利用して、θ_m-曲線と呼ばれるグラフの、空間への埋め込みに対する多項式不変量を構成しました。この不変量は、定義の簡単さもさることながら、グラフのキラル性を判定できる点が特徴で、分子の位相的立体異性体の研究など、今後様々な応用が期待されます。 どちらの研究成果も、現在論文作成中です。
|