Research Abstract |
本研究は「不動点定理を介した非線形問題の究明」と題して,種々の不動点定理を介して,非線形問題の基本的性質を明らかにするとともに,非線形微分方程式の問題,経済均衡問題,画像処理の問題への応用を試みた.まず,バナッハ空間における種々の作用素の不動点の存在と,その近似に関する問題をバナッハ空間の幾何学的観点から解明するとともに,不動点の存在と近似法を通して,バナッハ空間の幾何学的性質の特徴づけを行った.さらには非線形関数解析学の基本定理を不動点定理の立場から見直し,それを使って非線形最適化問題や非線形微分方程式,経済均衡問題の解の存在やその近似法に応用してみた.具体的には,まず数学,オペレーションズ・リサーチ,経済学における非線形問題,特に非線形最適化問題,非線形微分方程式の問題,経済均衡問題,画像処理の問題を数学的に把握し,それらを数学的に再構成してみたところ,従来の不動点定理や近似法を発展させるとともに,新たな手法を開発して組み合わせることが必要であることがわかった.特に,非拡大写像のコンパクトなしの不動点定理とその近似法,写像族の不動点定理とその近似法に基づく研究が大切であることがわかった.そこで,その研究を進め,それらに関するいくつかの有用な結果を得た.また,それらを非線形解析学などで重要である非線形最適化理論,非線形微分方程式論,経済均衡問題と結び付けることができ,その方面でもかなりの成果を得た.これらの結果を内外の雑誌や日本数学会で公表し,非常に関心をもたれた.また最近諸外国で引用されはじめたことを報告しておきたい.これは夏休みを利用しての大量の文献収集やその整理,ならびにこの問題に興味を持っている他大学の研究者との数多くの研究打ち合わせや討論が,功を奏した結果であろう.
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