1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09640329
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大西 明 北海道大学, 大学院・理学研究科, 講師 (70250412)
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Keywords | 量子ランジュバン法 / 反対称化分子動力学(AMD) / 核間カスケード / 多重破砕 / 静止Ξ^-反応 / 高エネルギー陽子入射反応 / 2粒子運動量相関 / ΛΛ相互作用 |
Research Abstract |
様々な温度・密度での核物質の相とその転移の研究は高エネルギー核反応研究の最大の目的のひとつである。本研究では、破砕過程での量子統計力学的揺らぎの効果を明かにし、核物質の低密度領域での相について理解を深めることを目標としており、この観点から昨年度までに我々は、量子統計力学的な揺らぎを取り入れた分子動力学(量子ランジュバン法)を提案し、またこの模型を(1)波束動力学の統計的性質、(2)重イオン反応での多重破砕、(3)マイクロクラスターの生成、(4)静止Ξ^-粒子からのハイパー核破片生成、などの現象に適用し、成果を発表してきた。 本年度は、このような成果に基づき、(1)高エネルギー陽子入射反応でのフラグメント生成、(2)Λ-Λ運動量相関とΛ-Λ相互作用、(3)高エネルギー重イオン反応におけるハドロン自由度の役割、などの課題について研究を行った。(1)は本研究計画当初から予定していた研究課題である。軽イオン入射でのフラグメント生成は、(大きな集団運動流を伴う)重イオン反応とは異なった自発的なフラグメント生成の機構が必要となる可能性がある。我々は現時点では、カスケード模型をもとに、統計的でない典型的な量子力学的過程を表現したCoalescence模型、および量子統計的な揺らぎによるを模型化した浸透模型(Percolation model)を組み合わせて10GeV程度のエネルギーでの陽子入射反応でのフラグメント生成の研究を行っており、これまでに、(Free Parameter無しで)様々な反応での重陽子生成がCoalescence模型で定量的に記述できること、Percolation模型での中間質量片生成に、反応の履歴(あるいはGeometry)が重要になること、の2点の新たな認識を得た。今後平均場的な相関を取り入れた研究を進める予定である。(2)の課題は、「統計的でない量子的相関・揺らぎ」の代表的なものである終状態相互作用による相関を逆に用いて、Λ-Λ相互作用の決定を試みたものである。また(3)の研究では、バリオンの(量子力学的な)励起状態が核反応中に伝搬することの重要性が明らかになりつつある。このように、核物質中でのハドロンの伝搬に見られる量子効果、ハドロンの2体系で現れる量子効果、より集団的な「物質」としての量子統計的揺らぎ、といった様々なレベルでの相関と揺らぎがどういった現象で顕著に見られるかを明かにし、最終的にはこれらを統合した動力学を構築していくことが今後の大きな課題である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Y.Hirata: "Quantum fluctuation effects on hyperfragment formation from Ξ^-absorption at rest on ^<12>C"Progress of Theoretical Physics. 102. 89-119 (1999)
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[Publications] Y.Nara: "Study of relativistic nuclear collisions at AGS energies"Physical Review. C61. 024901 1-19 (2000)
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[Publications] P.K.Sahu: "Baryon flow from SIS to AGS energies"Nuclear Physics. A(印刷中). (2000)
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[Publications] 大西 明: "重イオン反応と核物質の相(邦文)"数理科学. 430. 46-52 (1999)
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[Publications] A.Ohnishi: "Can We Extract Lambda-Lambda Interaction from Two-Particle Momentum Correlation?"Nuclear Physics. A(印刷中). (2000)
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[Publications] A.Ohnishi: "Quantum fluctuation effects on nuclear multifragmentation"Proc. of the 3rd Japan-Itary Joint Symposium, Perspectives in Heavy Ion Physics (World Scientific). 162-171 (1999)