1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09640402
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
藤井 淳浩 熊本大学, 理学部, 教授 (30034375)
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Keywords | 微結晶 / ハロゲン化タリウム / 量子サイズ効果 / 励起子 / 吸収スペクトル / 励起子閉込め効果 / 電子・正孔交換相互作用 |
Research Abstract |
本研究では微結晶中の励起子状態への量子サイズ効果の基礎的研究を目指して、TlClの蒸着薄膜の光吸収を測定した。TlClで膜厚の異なる多くの蒸着膜を用意し、その吸収スペクトルを5Kで測定し、励起子吸収帯のピークエネルギーを求めた。また、吸収測定に並行して、電子顕微鏡での観察より、蒸着されたTlCl微結晶のサイズRを決定した。バルク結晶中でのTlClの1S励起子は電子・正孔交換相互作用のため2本の吸収ピークとして観測され、それぞれ1A,1Bと名づけられている。測定の結果、この1Aと1B吸収帯のピークエネルギーは粒子サイズRが40a_B付近ではバルクの結晶中とほとんど同じであるが、粒子サイズRを小さくしていくと徐々にblue shiftして行く。そして粒子サイズRが5a_B以下になると急激にblue shift量が大きくなり、このblue shift量の粒子サイズ依存性はR=40a_B〜1.5a_Bの範囲でKayamumaによる理論計算の結果を非常に良く再現していることが分かった。蒸着膜の吸収スペクトルには1Aと1Bの吸収ピークに加えて、1Bの直ぐ高エネルギー側にバルク結晶中では観測されない新しい吸収帯が観測され1Cと名づけた。1Cの位置は粒子サイズRが5a_B以上では粒子サイズにあまり依存せず、それより粒子サイズが小さくなると1Bと融合して観測できなくなった。この吸収帯1Cはバルク結晶では見られず、微結晶中にのみ現れるので1S励起子の電子・正孔交換相互作用への量子サイズ効果に起因するものと考えられる。しかし、励起子のサイズ効果についての理論計算において、正確に電子・正孔交換相互作用を考慮した研究はまだ行われていないので、吸収帯1Cの起源についての十分な議論は現在のところ出来ない。
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