1997 Fiscal Year Annual Research Report
多成分流体系の非平衡熱力学とその非平衡統計力学的基礎
Project/Area Number |
09640458
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
北原 和夫 東京工業大学, 理学部, 教授 (20107692)
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Keywords | 流体 / 非平衡 / 熱力学 / 統計力学 / 多成分系 / 揺らぎ / 反応 / 拡散 |
Research Abstract |
多成分流体系の熱力学的変数の発展方程式の可逆部分がシンプレクティックな構造をもっていることを微視的な力学から理解するために、分布関数の第ゼロ近似として局所平衡分布を導入した。局所平衡分布は、マクロな変数を通してのみ微視的変数によって記述される。そうすると、局所平衡分布から示強パラメータの関数としてエントロピーが定義される。マクロな変数の平均値(すなわち熱力学変数)が、局所平衡分布による平均値と等しいという条件から、示強パラメータは熱力学変数の関数となるこうして、熱力学変数の関数としてエントロピーが定義される。熱力学変数の時間微分を局所平衡分布で平均したところ、他の熱力学変数とのポアッソン括弧とハミルトニアンの積の平均値で表わされることが判明した。これに基づき、一般の流体方程式を導いたところ、熱力学を構成する際に用いた反対称行列とはことなる表現が得られた。すなわち、反対称性だけでは現象論の範囲では、発展方程式は一意的に決定されない、ということを意味する。現象論にあとどのような公理を導入すべきか、は残された問題である。 本年は、多成分系として非平衡条件下に置かれた反応拡散系における揺らぎの計算を行った。すでに、定常状態においては、平衡状態には存在しない揺らぎの長距離相関が、非平衡状態で存在することが確かめられているが、その長距離相関が時間の関数としてどのように成長するかを、揺らぎを含めた流体方程式によって解析すると共に、計算器シミュレーションを行った。成長過程においては、流体方程式では特異的な関数形が現れるが、分子シミュレーションでは現われない。流体方程式は時間空間の小さい領域では正当化されないし、非平衡揺らぎに対して揺動散逸定理を仮定することに無理がある可能性がある。
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