1997 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質のエネルギー面階層性とモードカップリング
Project/Area Number |
09640461
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北尾 彰朗 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30252422)
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Keywords | タンパク質 / ヒト・リゾチーム / ダイナミックス / エネルギー面 / 分子動力学 / 階層性 / JAMモデル / 2次モーメント |
Research Abstract |
今年度は、タンパク質エネルギー面の階層性について重点的に研究を行った。まず溶液中で1ナノ秒間のヒト・リゾチームのダイナミックスを分子動力学を用いて再現した。タンパク質は自由度が多いため、そのダイナミックスをモードに分解して観察する必要がある。このような方法のうち最も代表的なものは、我々が提唱してきた、2次モーメントを用いてタンパク質の異方性をよく再現する集団座標を用いる方法である。 この方法を更に発展させ、タンパク質の固有の物理的な仮定を導入することで、物理的な描像を与えることを可能にしたのがJAMモデルである。このモデルでは、各エネルギー極小点近傍での揺らぎと極小間のジャンプを区別して解析することが可能になる。この分布の解析から、極小点は多数のモードの軸方向にまんべんなく分布しているのではなく、少数のモード(全体の5%)の軸方向にのみ広く分布し、他の95%の軸方向には、極小点が1つしか存在しないことが明らかになった。極小点が1つしかないモード軸方向のエネルギー面はパラボラ状でありこれを調和モードと呼ぶ。このようなJAMモデルによる解析から、タンパク質のモードは以下のように3種類(a.調和モード、b.単階層モード、c.多重階層モード)に分類される。 調和モードは、モード数では全体の約95%を占め、モード方向のエネルギー曲面の形状はパラボラ状である。単階層モードは、全体の4.5%を占める。このモード方向のエネルギー曲面はパラボラだが、モデルで仮定した形状とは異なる。このモードは側鎖の二面角の運動と関係している。多重階層モードは、全体のわずか0.5%だが、タンパク質の揺らぎをほぼ規定している。このモードでは、主鎖・側鎖の二面角が大きく変位し、原子間のパッキングが変化する。 これまでに論文発表したものの他に、ここまでの研究成果の最終的なまとめとして、現在論文を投稿中である。
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[Publications] Steven Hayward, Akio Kitano, and Herman J.C.Berendsen: "Model-Free Methods of Analyzing Domain Motions in Proteins from Simulation:A Comparison of Normal Mode Analysis and Molecular Dynamics Simulation of Lysozyme" PROTEINS. 27. 425-437 (1997)
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[Publications] Yuji Sugita and Akio Kitao: "Improved Protein Free Energy Calculation by more Accurate Treatment of Nonbonded Energy:Application to Chymotrypsin Inhibitor 2,V57A" PROTEINS. 30. (1998)
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[Publications] Geutam Basu, Akio Kitao, Atsuo KuKi and Nobuhiro Go: "Protein Electron Transfer Reorganization Energy Spectrum from Normal Mode Analysis.I.Theory" J.Phys.Chem.B.(in press). (1998)
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[Publications] Gautam Basu, Akio Kitao, Atsuo Kuki and Nobuhiro Go: "Protein Electron Transfer Reorganization Energy Spectrum from Normal Mode Analysis.II.Application to Ru-modified Cytochromec" J.Phys.Chem.B.(in press). (1998)
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[Publications] Yuji Sugita, Akio Kitao, and Nobuhiro Go: "Computational Analysis of Thermal Stability:Effect of I-to-V Mutations in Human Lysozyme" Folding & Design. (in press). (1998)
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[Publications] 北尾 彰朗 他: "シリーズニューバイオフィジックス「蛋白質のかたちと物性」" 共立出版, 234 (1997)