1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09640486
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
宇藤 茂憲 福岡教育大学, 教育学部, 助教授 (20185052)
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Keywords | リン脂質 / 相転移現象 / サブ転移 / 高圧条件 / ラマン散乱 / x-ray回折 / 過冷却水 / DSC |
Research Abstract |
極性頭部が2本の炭化水素鎖を拘束するリン脂質特有の構造は、多層ラメラ形態の相転移に特異な現象を生じさせる。この極性頭部が果たす役割を検証するに、(1)高圧(≦400MPa)下、(2)常圧低温領域、(3)リン脂質の種類を変える、条件で実験を行った。その結果、(1)と(3)より、(a)コリン(アルコール)部、(b)リン酸基、(c)グリセロール部、(d)アシル基(極性頭部と炭化水素鎖間のインターフェース部分)、極性頭部のこれら各部位のsub転移での動きを定性的に捕えることが出来た。また、(3)の実験より、これまでとは異なった条件でsub(対応する)転移を検証出来た。一方、(2)の実験で、極性頭部と接するH_2O分子(水和層)を「水」-->「過冷却状態」-->「氷」と低温領域で変化させることで、脱水による極性頭部の強制的な動きを誘導させた。この結果、過冷却水-->氷の発生で、リン脂質極性頭部の動きをRaman散乱実験で、また、これに伴う炭化水素鎖の充填形態をx-ray回折とRaman散乱実験で確認することが出来た。更に、水の存在する場所で氷の発生が異なる現象を見い出した。リン脂質に含ませた水分が多層ラメラ形態の水和層以外(剰余水)にも存在する場合とこの剰余水が存在しない何れも、六方晶系状の氷が発生をx-ray回折で検証出来た。前者はhomogeneous(約-20℃で氷発生)であり(純水とほぼ同じ氷発生温度)、後者はheterogeneous(約-45℃で氷発生)であった。極性頭部が約20Å程度で平行に並んでいる環境下では、氷の発生を可成り阻害することを確認出来た。尚、これらの結果は、現在、論文に取りまとめ中である。 今後の研究展開:高圧・常圧下でsub転移に伴う極性頭部の定性的評価は概ね出来たと考える。今後、更に定量的な解析を実行し、この転移に関する理論的解析を試みる予定である。また、低温領域(≦0℃)でのリン脂質とH_2O分子の変化の実験的検証を継続中である。
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Research Products
(1 results)