1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09640505
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小屋口 剛博 東京大学, 地震研究所, 助教授 (80178384)
|
Keywords | 火山噴火 / 火山噴煙 / 噴火の推移 / マグマの上昇 / マグマのダイナミックス / 破砕作用 / 数値実験 / 流体実験 |
Research Abstract |
本年度は以下の5点について成果をあげた.(1)昨年度に引き続き,浅間火山天明3年の噴火の推移を再現し,破砕作用の違いによる噴火様式の違いについて検討した.その結果,この噴火ではマグマの破砕の程度が低い状態でプリニー式噴火が継続したために,プリニー式噴火にともなって火砕丘が形成し,それが噴火の推移に大きく影響を与えたという知見を得た(発表文献参照).現在は,この噴火におけるマグマの破砕の程度の変動が火砕流の発生にどのように関連したか,という問題に焦点を絞った野外調査を進めている.(2)マグマの上昇メカニズムと噴火様式の変化について数値的な研究を行い,マグマが破砕する直前にガスと液体マグマが大きな相対速度を持ち,その結果噴火様式に多大な影響を与えることを明らかにした(発表文献参照).(3)昨年度,堆積物の粒径を用いてプリニー式噴煙の傘型域の拡大速度や極細粒火山灰を含む堆積物総量の推定する基本原理を確立したのを受けて,これを実用的なインバージョン法として確立するために,データの誤差の評価をふくめた洗練した手法を開発した.この研究はほぼ終了し,現在1991年ピナツボ噴火の堆積物に適用して,手法の最終チェックをおこなっているところである.(4)上記の手法をピナツボ噴火に適用した結果,この噴火において70から80%の噴出物が数10ミクロン以下の細粒火山灰である可能性があることがわかった.細粒火山灰の成因については,電子顕微鏡などを用いた観察によって,記載が進められている.(5)昨年度に引き続き,噴煙の密度が大気の密度と釣り合ったのち重力流として水平に広がる際の流体的挙動を理解するための数値実験と流体実験を行っている.本年度は特に,CIP法を用いて,重力流の挙動についてナビエ・ストークス方程式を直接解く数値コードの開発に重点をおき,結果を得つつある.
|
-
[Publications] 安井真也・小屋口剛博: "浅間火山1783年のプリニー式噴火における火砕丘の形成" 火山. 43・6. 457-465 (1998)
-
[Publications] 荒牧重雄・安井真也・小屋口剛博他: "古記録・古文書に残された浅間火山天明3年の降下火砕堆積物の層厚" 火山. 43・4. 223-237 (1998)
-
[Publications] S.Yoshida,T.Koyaguchi: "A new regime of volcanic eruption due to the relative motion between liquid and gas" Journal of Volcanology and Geothermal Research. (印刷中). (1999)