1999 Fiscal Year Annual Research Report
火山噴煙のダイナミックスに関する流体力学的研究(特にマグマの破砕作用との関係について)
Project/Area Number |
09640505
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小屋口 剛博 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (80178384)
|
Keywords | 火山噴煙 / 噴火のダイナミックス / 流体実験 / マグマ / 火砕物 / リモートセンシング / 数値実験 / 破砕作用 |
Research Abstract |
本研究では、爆発的な噴火の数値モデルを開発するとともに、主にフィリピンピナツボ火山1991年噴火の観測結果に基づいて、堆積物の粒径分布、構成粒子の形状から爆発噴火のダイナミックスや爆発的噴火におけるマグマの破砕過程を明らかにする手法を開発した。 理論モデルに関する研究成果は以下の2点である。第一に、発泡しつつあるマグマの火道中の定常上昇運動についてのモデルを構築した。その結果、火道中のマグマの破砕面前後で液相と気相の相対速度が生じた場合、従来報告されているマグマの上昇様式と定性的に大きく異なる様式でマグマが上昇する可能性があることが示された。、また、爆発的な噴火によって生ずる火山噴煙のダイナミックスを数値的にシミュレートする計算コードを開発した。 観測に基づく研究としては、ピナツボ噴火の降下軽石層の粒径分布から噴火のダイナミックスの再現と総噴出量の推定を行なった。また、火砕物ガラスおよび結晶の破砕直後の初生粒径分布を求めた。重要な結論として、爆発的な噴火では、火砕物全体の7割以上、またマグマ中の結晶のおよそ6割が極細粒に破砕され、大気中に拡散してしまうという知見を得た。細粒火山灰中のガラスと斜長石結晶の破砕直後の初生粒径分布が系統的に異なること、また、火砕物の詳細な形状観察や、極細粒火山灰の粒径分布が軽石の気泡の大きさや気泡壁の厚さのスケールに影響を受けていることから、極細粒火山灰を形成する破砕過程が主に気泡の破裂に因る可能性が高いことが明かとなった。同様な手法は、浅間火山1783年噴火、諏訪瀬火山1813噴火の噴出物にも適用された。特に、浅間火山1783年噴火については、古文書の記載と堆積物の比較から、噴火推移および噴火のダイナミックスを詳細に再現することができた。
|
-
[Publications] 安井真也、小屋口剛博、荒牧重雄: "堆積物と古記録からみた浅間火山1783年のプリニー式噴火"火山. 42巻4号. 281-297 (1997)
-
[Publications] 安井真也、小屋口剛博: "浅間火山・東北東山腹における1783年噴火の噴出物の産状とその意義"日本大学文理学部自然科学研究所「研究紀要」. 33号. 105-126 (1998)
-
[Publications] 荒牧重雄、安井真也、小屋口剛博、草野加奈子: "古記録・古文書に残された浅間火山天明3年の降下火砕物の層厚"火山. 43巻4号. 223-237 (1998)
-
[Publications] 安井真也、小屋口剛博: "浅間火山1783年のプリニー式噴火における火砕丘の形成"火山. 43巻6号. 457-465 (1998)
-
[Publications] S. Yoshida, T. Koyaguchi: "A new regime of volcanic eruption due to relative motion between liquid and gas"Journal of Voleanology and Geothermal Research. 89. 303-315 (1999)
-
[Publications] Y. lshimine, T. Koyaguchi: "Numerical study on volcanic eruptions"Computational Fluid Dynamics Journal. 8. 69-75 (1999)