1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09640539
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
伊藤 慎 千葉大学, 理学部, 教授 (10201930)
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Keywords | 海底扇状地 / 流路-氾濫堆積システム / シート状砂層システム / 半遠洋状シルト岩 / ローブ堆積物 / 低海水準期 / 高海水準期 |
Research Abstract |
平成11年度は、砂質海底扇状地において最も基本的と考えられてきた流路-氾濫堆積システムとシート状砂層システムとの時空関係について詳細に検討した。さらに、これまでの研究によって明らかとなってきている、相対的海水準の変動にともなう海底扇状地堆積システムの発達過程と半遠洋性シルト岩の化学的特徴の変化との関係を詳しく検討した。 シート状砂層システムは大きく2つの堆積環境で形成される。その1つは従来ロープ堆積物として現世の海底扇状地を中心に認定されてきた流路末端部からその周辺の深海平坦面にかけて形成されるものである。一般に、ロープ堆積物の認定には上方厚層化サイクルの存在が指摘されてきているが、これまでの研究からは、このような明瞭な堆積サイクルは認められない場合がより一般的であることが明らかとなってきた。さらに、流路末端でのシート状砂層システムには、上流部での流路-氾濫堆積システムとほぼ同時期に同様な堆積サイクルが発達する場合の多いことも明らかとなってきた。また、流路-氾濫堆積システムの堆積中心の移動が、海底扇状地を広く覆うシート状砂層システムの発達にともなって行われる場合のあることが明らかとなった。このことは、海底扇状地の場合も、大洪水時に陸上の扇状地で認められる多量の土砂流出にともなうsheet floodの発生により、その後に流路システムが大きく変動する現象と類似した堆積作用が存在するものと考えられる。 半遠洋性シルト岩の化学組成に注目すると、低海水準期のものほどTiO2やFe2O3を多く含み高い帯磁率を示すのに対し、高海水準期にはCaOの含有率が高くなり、帯磁率が小さくなる傾向が認められる。これは、高海水準期には炭酸塩の殻を持つ有孔虫を始めとする微化石の相対的供給量が陸源砕屑物に比べ多くなるためと考えられる。このように、海底扇状地堆積物を構成する半遠洋性シルト岩の化学組成の変化は、低海水準期により頻繁に、かつ規模の大きな乱泥流が発生するのにともない、midwater flowからの細粒な陸源砕屑物の深海底への供給量が増加するためと考えられる。
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[Publications] M. Ito, T. Nishikawa and H. Sugimoto: "Tectonic control of high-freguency depositional sequences with durations shorter than Milankovich cyclicity: An example from the Pleistocene paleo-Tokyo Bay, Japan"Geology. V.27・no8. 763-766 (1999)
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[Publications] 伊藤 慎: "シーケンス層序学の基本的枠組み"地質学雑誌. V.105.no.. 508-520 (1999)