1998 Fiscal Year Annual Research Report
東北日本弧、下部地殻由来はんれい岩質捕獲岩の放射年代と岩石学的性質の広域的比較
Project/Area Number |
09640540
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
藤林 紀枝 新潟大学, 教育人間科学部, 助教授 (20238603)
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Keywords | 下部地殻 / ガブロ(はんれい岩) / ウェブステライト / Sr,Nd同位体 |
Research Abstract |
東北日本弧の新生代火山岩中に包有されるはんれい岩質捕獲岩の中から,本年度は主に野手上山(福島県)と八ケ岳(山梨県-長野県)地域のはんれい岩質捕獲岩類の岩石学的特徴,鉱物化学組成および同位体化学組成の特徴を検討した. その結果、以下の点が明かとなった。 1) 野手上山玄武岩中には,カンラン石ウェブステライト,ウェブステライト,ガブロ,ガブロノーライトが含まれ,一の目潟火山の超苦鉄質から苦鉄質包有物と異なって,角閃石は含まないという特徴がある. 2) 野手上山玄武岩中に含まれるカンラン石ウェブステライトは,未分化な島弧ソレアイトの結晶分化物で,カンラン石と斜方輝石が共晶関係にあり,またスピネルが安定な条件を満たす高圧条件(モホ面付近)で形成された.同時に,単斜輝石の化学組成変化の検討からは,未分化マグマの組成は,カンラン石の分別効果により早期にCaに富んでいく変化を示したはずであることがわかった. 一方,ウェブステライト,ガブロは,同じ未分化マグマからの派生物とは考えにくく,異なる複数のマグマからの分別物と考えられ,異なった成因を考える必要がある. 3) 八ケ岳火山岩中のはんれい岩質包有物は,下部地殻と中部地殻の深さのマグマ溜まりで形成されたことがわかった.下部地殻の深さには少なくとも2つのマグマ溜まり,中部地殻には少なくとも1つのマグマ溜まりが想定される.前者では玄武岩質安山岩質マグマと安山岩質マグマの混合が起こり,後者では一つの端成分としてデイサイト質マグマが関与したマグマ混合が起こったと考えられる.これらの端成分はそれぞれ異なる同位体化学組成を示し,起源物質が異なる.
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