1997 Fiscal Year Annual Research Report
モンスーンが誘発する湧昇流と石灰質ナノ化石群集との相関解析
Project/Area Number |
09640553
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岡田 尚武 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80111334)
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Keywords | モンスーン / 石灰質ナノ化石 / 湧昇流 / ミランコビッチ周期 |
Research Abstract |
オ-エン海嶺のコアODP 722Bから採取した221試料の全てについて光学顕微鏡下での種の同定と計数を完了した.詳しい解析はまだ行っていないが,下部透光帯の種Florisphaera profundaは酸素同位体ステージ17(約65万年前)以降は間氷期に相対頻度が低くなっており,間氷期にはモンスーンが発達するため湧昇流が弱まったとする説と整合的である.しかし,約65-100万年前にはこの関係が逆転している層準がいくつか認められた.約65-120万年前は地軸の傾きの変化による4.1万年周期の卓越したLaplace chronと地球公転軌道の離心率変化に基づく10万年周期の卓越したMilankovitch chronとの漸移期(Croll chron)に当たるとされる.今回明らかになったF.profundaの相対頻度と酸素同位体比変化の関係は,この漸移期において必ずしも氷期-間氷期サイクルと湧昇流の強さが相関していなかったことを示すのかもしれない.一方,一定の条件を満たした湧昇流中で爆発的に繁殖することが知られている小型のプラコリスは,F.profundaよりも変動幅が大きくて酸素同位体比曲線との関係はより複雑である.また,10万年周期よりは短い周期性が強く現れているように見える.このほか,Gephyrocapsa属の各種やUmblicosphaera sibogaeについても特徴的な年代変化が認められる.アラビア海西部におけるこれらの変化傾向の普遍性は,来年度に行うオマーン沖のコアODP 723Aの検鏡結果で確認できる.また,熱帯インド洋中部では,モンスーンよりも西風の方が海洋における生産性が強く影響しているとする研究結果が昨年報告された.オマーン沖の方がオ-エン海嶺よりもモンスーンによる湧昇流の影響がより強く現れるはずなので,両コアにおける組成変化を対比することで,モンスーンの影響と西風の影響の強さを比較検討する予定である.
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