Research Abstract |
昨年度に実施した石川県金沢市東部〜北東部地域での下部更新統大桑層の地質調査をさらに発展拡大させ,本年度には同県東縁部〜東縁部地域ならびに富山県小矢部市南西部地域に分布する同層ならびに下位層となる高窪層について,5,000分の1地形図にもとづく地質調査をほぼ終了した.その結果,金沢市北東縁部〜東縁部地域に分布する大桑層には,青灰色〜暗灰色砂質泥岩・泥質砂岩が卓越し凝灰岩の多数挟在する中下部,青灰色細粒砂岩からなり貝化石層ならびに凝灰岩が狭在する中部,そして塊状黄褐色細粒砂岩から構成される上部という金沢市北東部地域で確立された岩相区分が適用されることが判明した.また,同層中への挟在がこれまでに確認された8枚の凝灰岩層に加え,鍵層として有効な凝灰岩層をさらに7層準で確認するとともに,下位層である高窪層の地質調査結果とあわせ,同地域では大桑層と高窪層とが緩やかな傾斜不整合関係にあることを明らかにした.そして,凝灰岩鍵層ならびに不整合面の野外での追跡結果を昨年度の成果と合わせ,金沢市地域に分布する大桑層は,水平方向への岩相・堆積相の変改にきわめて乏しいこと,そして同市北東部では北東-南西方向あるいは北西-南東方向の軸をもつ緩やかな背斜・向斜構造を呈するものの,さらに東には北北東-南南西の軸をもつ明瞭な向斜構造ならびに同方向で東南東上がりの衝上断層が存在することが判明した.一方,小矢部市地域に分布する大桑層にも,金沢市北東部地域で確立された岩相苦がほぼ適用されることが確認され,両地域で共通に識別される凝岩鍵層にもとづく岩相対比結果より,小矢部市地域では同層中部がより厚く発達することや,金沢市北縁部でその存在が推定される衝上断層が小矢部市地域にまで延長することなどが明らかとなった.現在は,調査区域をさらに南へと拡大中であり,これまでの調査区域内では明瞭な岩相変化が認められなかった大桑層が,南方へ向かって岩相が変化することが判明しつつある.これに加えて,金沢市ならびに小矢部市両地域の大桑層中部について底生有孔虫化石の予察的検討を行い,両地域ともに水深の緩やかな上昇,そして引き続いての緩やかな低下が認められることや,小矢部市地域のほうが海の侵入が早かったことなどを確認した.また,潟成堆積物と推定される大桑層下部の堆積環境を確かなものとするため,石川県河北潟の柱状採泥試料の堆積相について記載報告した.
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