Research Abstract |
水に飽和したマグマが火道をゆっくり上昇する際に,脱ガスの進行と同時に減圧による結晶作用が進行する.気泡でスポンジ状になったマグマから,脱ガスが外部に向かって効果的に生じると予想される.脱ガスと結晶作用によってマグマの見かけの粘性が急増することが期待される.一方.噴火に際しては,ほとんどの気泡がつぶれて,気泡が局在化しながら,最終的には脱ガスしきった緻密な溶岩が地表に現われる. 最近の実験岩石学の結果は,マグマの上昇速度が遅いほど結晶作用がより完全に起こることを示している.このため,上昇速度が遅くなるほどマグマの見かけの粘性が上がり,ついには,高粘性マグマが火道中で動けなくなり,自ら火道上部に栓をしてしまうと予想される.しかし,溶岩中に気泡が残っているため,進行する結晶作用によって空隙圧が高まり,ついには栓溶岩は破壊されてしまう.仮に,脱ガスのバイパスが栓の脇に準備されていたとしても,こうして,マグマの新たな貫入のイベントが起こりうる. 雲仙普賢岳1991〜1995年噴火では,噴出活動に複数のパルスが認められた.いずれのパルスにおいても,溶岩ドームは高度を増した.そこでは,1)溶岩の石基ガラスの分化程度と噴出率とが極めてよい一致を示し,かつ,2)石基斜長石のリム組成も調和的に変化する.また,3)斜長石-ガラス間のCa/Na分配係数は噴出率が低下するほど急増する.4)ドームの出現に先立ってスポンジ状のマイクロパミスが噴出し,時々極めて発泡度のよい溶岩も局所的に出現した.これらの結果は,噴出率(すなわち上昇速度)の減少に伴ってメルトの重合度が増加し,粘性が増し,気泡の癒着がおこったことなどを示している.このため,マグマが火道を自ら栓をし,一旦噴火を止め,その後,栓を外して活動が再開するということを繰り返したと解釈される.
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