Research Abstract |
本研究では,CaO-FeO-MgO-SiO_2系やFeO-MgO-Al_2O_3-SiO_2系の相平衡実験を1気圧から地殼下部およびマントル上部までの圧力範囲で行い,地殻下部やマントル上部を構成している菫青石,スピネル,カンラン石,斜方輝石,単斜輝石などの重要な造岩鉱物相互の間の相平衡実験から造岩鉱物の熱力学的性質を調べ,役に立つ地質温度計圧力計を確立する事を試みた.本課題研究の成果は以下の通りである. 1. Ca-Fe-Mgカンラン石の熱力学的性質の理論的研究(Mineral.J.,20,135-149,1998)とカンラン石-単斜輝石間のCa,Fe,Mg分配実験(Rev.High Pressure Sci.Technol.,7,95-97,1998)とその理論的解析(Geochem.J.,33,33-58,1999),および,Ca-Fe-Mgカンラン石の不混和実験(submitted to Am.Mineral.)からカンラン石は無秩序多席正則溶液,単斜輝石は結晶内交換反応を伴う多席正則溶液の性質を持つ事が分かった.この事から,カンラン石と単斜輝石間のCa,Fe,Mg分配は系のCa量およびFe/(Fe+Mg)の増加によって増大し,圧力が増加してもあまり変化しないことを示した(ditto). 2. 斜方輝石と菫青石の間のFe-Mg分配実験をFe_3Al_2Si_3O_<12>-Mg_3Al_2Si_3O_<12>系でMgに富む領域について,酸素分圧をWI(ウスタイト+金属鉄)バッファーに固定して調べた.この反応は温度変化に大きく依存するので地質温度計として使える事が分かった(Proc.NIPR Symp.Antarct.Geosci.,10,150-159,1997). 3. Mg_3Al_2Si_3O_<12>組成の系は1気圧1000℃から1025℃の間の温度で斜方輝石+菫青石+スピネルの組合せからカンラン石+菫青石+スピネルに変化する事が9カ月にわたる実験で明らかになった.これにより,単変数反応により高温側で斜方輝石+スピネルからカンラン石+菫青石が生成される事を示した(岩鉱,93,18-26,1998).
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