1997 Fiscal Year Annual Research Report
表面分析法を利用したケイ酸塩鉱物の化学的風化メカニズムの解明
Project/Area Number |
09640577
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
瀬山 春彦 国立環境研究所, 化学環境部, 主任研究員 (40142096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 敦 国立環境研究所, 化学環境部, 主任研究員 (80171734)
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Keywords | 風化 / ケイ酸塩鉱物 / 雲母 / 表面分析 / X線光電子分光 / 二次イオン質量分析 |
Research Abstract |
本年度は、黒雲母と硫酸酸性の水との反応(黒雲母薄片試料を0.05mol/l硫酸中で1時間〜10日撹拌)をケイ酸塩鉱物の化学的風化のモデルとし、黒雲母表面の変化を調べた。 X線光電子分光分析(XPS)から得られた黒雲母表面のK、Fe、AlのSiに対する相対濃度は、硫酸との反応により減少し、黒雲母表面からK、Fe、Alが選択的に失われ、Si濃度の高くなった表面溶脱層の形成が示唆された。また、黒雲母のSi2s、O1s光電子結合エネルギー(未反応黒雲母:Si2s=153.3eV、O1s=531.3eV)は硫酸との反応により高結合エネルギー側へシフトし、10日間反応後の値(Si2s=154.6eV、O1s=533.1eV)は石英やシリカゲルの値に近かった。従って、酸によるK、Fe、Alの溶脱の進行とともに、黒雲母表面には、SiO2・nH2Oの組成を持つ表面溶脱層が形成されるものと考えられる。 表面溶脱層の生成は、二次イオン質量分析法(SIMS)による分析でも確認された。二次陽イオン強度の時間変化による深さ方向分析では、硫酸と反応した黒雲母の表面からFe、Mg、Alが失われていることが示された。さらに、雲母結晶中で同じ位置を占めるFeとMgの硫酸と反応後の深さ方向分布パターンは互いに似ているのに対し、AlではFeやMgより表面からの溶脱深さが浅かった。以上の結果から、Alは、FeやMgより酸による溶脱を受けにくいことが分かる。SIMSによる深さ方向分析から、硫酸と1週間反応した黒雲母では、表面溶脱層の厚さが約100nmと見積もられた。 走査電子顕微鏡法(SEM)による表面観察では、硫酸と反応した黒雲母表面には割れ目や表面層の剥離が認められ、酸による黒雲母の溶解は不均一に進行することが示された。
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