1998 Fiscal Year Annual Research Report
現世および化石の炭素および炭酸塩中のホウ素同位体の地球化学的挙動
Project/Area Number |
09640580
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
野村 雅夫 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 助手 (60100997)
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Keywords | ホウ酸 / ホウ素同位体 / 同位体比 / 炭酸塩 / サンゴ / 化石 |
Research Abstract |
前年度に続き、沖縄南西諸島の沖永良部島、渡名喜島および宮古島で採取されたサンゴ17試料についてホウ素同位体比の測定を行った。サンゴの種はhelioporaを2種、その他はすべてacroporaである。その約6gの試料からホウ酸メチル蒸留法によりホウ素を単離し、ホウ素同位体比を測定した。また、共存元素をICP発行分光分析法により定量した。その結果、主な共存元素として、Na,K,Li,Mg,Sr,Ba,B等が含まれており、特にNa,K,Mg,Srが多く含まれていた。ホウ素濃度は20〜50ppmであり、その平均値は40.95ppmで、標準偏差は±7.23ppmであった。ホウ素同位体比は4.107〜4.158(δ^<11>Bにして15.8〜28.3‰)であり、heliopora種を除いたacropora種15試料中のホウ素同位体比は4.133〜4.158で、その平均値は4.142となった。このときの標準偏差は±0.007であり、非常に狭い範囲のバラツキであった。ホウ素は海水中(pH8.2)では主にB(OH)_3として、一部B(OH)_4^-の形で存在しているが、サンゴつまり炭酸カルシウムにホウ素が取りこまれるとき、ホウ素はほとんどすべてB(OH)_4^-の形で取りこまれる。このとき二つの化学種間の同位体交換平衡定数Kを1.019とし、海水中のホウ素同位体比を4.203として、炭酸カルシウム中のホウ素同位体比を計算すると4.138となる。この値とサンゴ15試料中の平均のホウ素同位体比4.142の値とは、測定誤差などを考えれば非常に良い一致を示した。しかし、heliopora種のサンゴ2試料中のホウ素同位体比は、理論計算値より少し低い値であった。このことは、Kの値が少し小さく算定されている可能性がある。また、helioporaとacroporaのサンゴ種間で共存元素や同位体比などに違いが見られ、heliopora種のサンゴ中のホウ素同位体比はacropora種より低いホウ素同位体比を示した。現在石炭試料として、新たにオーストラリア、中国、インドネシア、ロシアからのサンプルが、また石油試料としてオーストラリア、中東、アブダビ、ベネズエラ等の試料が手に入り、来年度にはホウ素の抽出を行い、ホウ素同位体比の測定予定である。
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