1997 Fiscal Year Annual Research Report
超高時間分解指紋領域赤外分光法による電子励起状態の特異な分子構造の研究
Project/Area Number |
09640597
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 裕巳 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (20185482)
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Keywords | 赤外分光 / 指紋領域 / 電子励起状態 / 時間分解分光 / 偏光二色性 / 超高速現象 / 光学的ヘテロダイン検出法 / 分子構造 |
Research Abstract |
本年度の研究計画は、(1)赤外発生方法の検討,(2)検出部の改良,(3)非線形光学効果による感度の向上,(4)いくつかの分子への応用,を中心とするものであった。まず(1)については,GaAsを用いた光整流に基づく赤外発生を試みたが,少なくとも測定に十分な強度では、赤外光を発生することができなかった。(2)については当初,検出器は既存のものを用いてプリアンプを新たなものに置き換える予定であったが,検出器自体を,高速応答性・直線性のよい光起電力型MCT検出器に置き換えた。我々の実験ではピコ秒パルス赤外光を用いるため,これによって感度が上がると期待したのである。実験の結果,実際よりも以前よりも感度を高くすることが可能となった。(3)については,過渡偏光二色性に基づく光学ヘテロダイン検出による赤外スペクトル測定法を創案・開発し,既に指紋領域でピコ秒赤外スペクトルを測定しているジメチルアミノニトロスチルベンについて,この方法を適用して感度が実際に向上することが可能かどうかを調べた。理論的この方法を定式化し,適当な実験条件を仮定したところ1桁近い感度の向上が予想されたが,際に測定したところ,ほぼ1桁程度,感度が向上することが確かめられた。当初計画には含まれていないが,(5)実験装置の自動化を,本研究の一環として行った。これまでは,波長の掃引とそれに伴う赤外発生用光学結晶の角度調整を手動で行っていたが,これをコンピュータ制御のパルスモーター駆動とした。以上,行ってきた(2)(3)(5)の装置・測定方法の改良により,ピコ秒過渡赤外スペクトルの測定対象の範囲が,以前よりもはるかに広くなるものと考えている。これらの作業に手間取ったため,現段階では(4)については本年度はまだ実施できていないが,来年度は(4)に専念できる環境が整ったものと考えている。
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