1998 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属表面での水素原子の量子的振子舞いに関する研究
Project/Area Number |
09640601
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
高木 紀明 京都大学, 大学院理学研究科, 助手 (50252416)
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Keywords | 遷移金属表面 / 水素 / 化学吸着 / 電子エネルギー損失分光 / 表面振動 / 電子トンネル拡散 / フォノン / 2次元超構造 |
Research Abstract |
表面に吸着したH原子は、各サイト間をトンネル拡散することができる。トンネル拡散の確率が大きいとHは量子的に非局在化し、振動準位が有限の幅をもったバンド構造を形成することが理論的に予測されている。Ni(111)表面におけるHでは、バンド幅は基底状態で数meV、励起状態では数十meVと見積もられている。本研究では、CCDカメラを用いた低速電子回折パターン取り込みシステムを改良整備し、IV曲線の測定を行った。また、高分解能電子エネルギー損失分光装置を整備して、Ni(111)表面におけるH原子の量子的非局在化の研究を行った。用いた分光器のエネルギー分解能は、1-2meVと世界最高水準である。Hの表面被覆率θの関数として、H原子の振動スペクトルを測定したところ、θ=0.5で、17、90、96、135meVに損失ピークが観測された。このθでは、Hは(2×2)-2H構造という超構造を作る。このとき、H原子は、hcpサイト、fccサイトの2種類のサイトに吸着している。90、96meVはそれぞれ、hcpサイト、fccサイトに吸着したHの非対称伸縮振動である。本研究で初めて、2種類の吸着サイトの分離に成功した。17meVのピークは、基板のフォノンである。θ〜0.2でもこのピークは観測されることから、(2×2)-2H構蓬は島状成長することがわかる。低被覆率では、島状成長した(2×2)-2日構造と格子ガスの2相分離状態にある。θ<0.1では、90と96meVのピークの他に、60-70meVから110meVまで拡がっていると思われるブロードなピークが観測された。このブロードなピークは格子ガス相に対応しており、Hの励起状態が量子的非局在化を起こしていることと関係していると考えている。
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